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133話
「今、ゼノスと蔵之介は外に出てるんだ。すぐに戻ると思う」
海は今の状況を知らないという提で言った。
「そうか、どこにいたか知っているのか?」
「ツリーをもう一度見に行きたいって向かったよ。すぐ戻るって言うから俺はここに残ったんだ」
海が言うとビアンカの声は黙った。
ビアンカならここで「怠慢だ」と文句の一つでも言ってくるはずだ。
しかし、
「分かった、なら探してみよう」
この言葉に海はビアンカ本人ではないと確信した。
「部屋の中をな」
ビアンカの声がそう言うと、ドアを開けようとドアノブをひねった。
開こうとすると海の糸が引っかかり開かなかった。
海は慌ててさらにドアに糸を張り巡らせる。以前ビアンカに破られたのを経験し、海は硬くドアへの糸を張った。
「仕方ない」
ビアンカの声が聞こえた。その後に同じ声が続く。
「海!蔵之介を守れ!」
海はそれを聞いて蔵之介を抱き上げ、ゼノスの首根っこ掴んで、ドアから離れるように飛んだ。
ドアが吹き飛び破片が飛び散った。海はそれが蔵之介に当たらない様背中を向けた。
蔵之介がドアを見ると、ビアンカがビアンカを押し倒していた。馬乗りになるビアンカは蔵之介の作ったマフラーをしている。
「来たかワイト」
マフラーをした方のビアンカが言い、もう一人のビアンカは笑った。
「すごいね、生贄は僕の正体を見破ったよ。君じゃないって」
「当たり前だ!」
マフラーをつけたビアンカは手に糸をため、もう一人のビアンカにそれを打ち付けた。しかし、打ち付けらそうな中でも「ふ」と笑い、そのビアンカは打ち付けた糸が散るのと同時に姿を消した。動きが素早かったのか、蔵之介にはよく見えていなかった。
「また会おう、蔵之介」
ビアンカの声が耳元で聞こえて離れていった。
蔵之介はぞわっと鳥肌がたち、海にしがみついた。
「何だったんだ?」
海がつぶやき、蔵之介を抱きしめる。
ゼノスも何があったのか分からず、呆然と状況を眺めていた。
「ビアンカ様」
ピーが駆け寄り、ビアンカはため息をつく。
「蔵之介、大丈夫か?」
「うん」
蔵之介は頷いた。
「ゼノスと海も起きていられたんだな」
ビアンカは二人が、手袋と帽子をつけているのを見て、蔵之介を見た。
「蔵之介が二人の帽子と手袋を渡したのか?」
「うん、二人とも寝ちゃって。ゼノスが手袋で起きたみたいだったから」
「そうか、いい判断だ」
ビアンカはそういって、手のひらに糸を出し何かを編み上げた。四角の連なる輪っかが二つ出来上がる。
「二人にはこれを渡しておこう、治癒糸で編み上げた。今後同じ状なことがあっても、それで手袋や帽子のように敵からの攻撃の効力をけすことができる。致命傷には聞かない量だが一時的にには使えるだろう」
海とゼノスはそれぞれ受け取り、手首にそれをつけた。
「僕は外の様子を見てくる。まだ何かいるかもしれない」
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