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138話

「うぅ……」  苦しさから解放され、ゼノスが声をもらした。 「これで大丈夫だろう」 「よかった」  蔵之介はゼノスに歩み寄り、抱き上げてベッドに横に寝かせ、マフラーをまき直した。 「このマフラーで首の傷とか治る?」 「ああ、しかし治癒糸は使えばその力は弱まる。効力が持続するものじゃないんだ。だからゼノスの傷が治ったら持ってくるように言ってくれ。改めて治癒糸を編み込ませる」 「分かった」  蔵之介が頷く。 ビアンカはプレゼントの箱の方へ振り返り、糸を放った。その糸は各箱に伸びていき、少し経つと縮まりビアンカの手の中に戻った。 「ここにある残りのプレゼントは安全だ。しかし海が来るまでは開けないでおいてくれ」 「うん、さっきのゼノス見たから開けるの恐いよ」  蔵之介はうつむき、意識の戻らないゼノスを見ていた。 「ゼノスはすぐに起きるよ。僕は仕事に戻らないと。また仕事が増えた」  ビアンカはため息交じりに言った。  最近のビアンカは少しつかれているように見える。  もしかしたら蔵之介の想像以上につかれているのかも知れないがビアンカはそれを隠しているのかもしれない。  蔵之介はベッドから立ち上がった。 「ビアンカ」  名前を呼ぶとビアンカはほほ笑んだ。 「俺に何かできることがあったら言って。今は勉強とかもあるからあまり手伝えないけど。できる事ならなんでもするから。俺ずっと何もしてこなかったけど、このままじゃビアンカのお荷物になっちゃう気がして」  蔵之介はためらいがちに言う。こんなこと言うと今までなら「でしゃばるな」とか「お前に何ができる」とか言われてきた。けどビアンカの為なら何かしたい。蔵之介はそう思っていた。 「それは助かるよ」  ビアンカは蔵之介の頭を撫でた。そして蔵之介を抱き寄せる。 「ビアンカ?」  ビアンカは蔵之介の頭に顔を寄せると大きく息を吸った。そして顔を離して吐き出す。  その後も蔵之介の頭を撫でたり顔を摺り寄せたり、背中を撫でたり、ビアンカは蔵之介を堪能していた。 「あの、くすぐったい」  蔵之介はビアンカの脇を撫でる手に肩をすくめた。 「なんでもさせてくれるんだろ?」  ビアンカは蔵之介の耳元でささやいた。 「なんでもするとは言ったけど……」  蔵之介はビアンカの体を撫でる手に時折体をこわばらせ、堪えるような声をもらす。 「んっ……う」  蔵之介はビアンカの服をきゅっと握りしめる。  そこへドアがノックされた。 「俺だ。入るぞ」  と海の声がする。ドアが開き、海は固まった。

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