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142話 妊娠の報告

 蔵之介は隠すのを断念して、海に目を向けた。 「実は……、お腹に子供がいるんだ。ビアンカの」  海はそれを聞いて絶句していた。しかし察しもついていたのであろう。すぐには怒りださず、ぬいぐるみは入れてあった箱に戻した。 「いつだよ」  海は冷静なのか、怒っているのか分からない。背を向けられ表情を伺うことができなかった。 「あの、海が修行に出た日に……」  蔵之介が言うと、海は拳を強く握り震わせた。 「あいつ……俺を追い出したかっただけかよ」  海は怒って部屋のドアを開けた。 「う、海!?」  後を追おうとしたが、海は振り返り。 「部屋から出るな」  と鋭く睨み言って、ドアを閉めた。蔵之介は何も言えず目の前で閉じられたドアに触れ、部屋の中に戻った。  蔵之介はとぼとぼとベッドへ向かい、ゼノスの寝ている横に座った。  海は怒っていた。どうなるんだろう?  多分ビアンカの所に向かっている。ビアンカに掴みかかりでもしたら、海は……。  ビアンカが負けることはないと思うけど、王に手を上げたらどうなるのか想像もできなかった。  やっぱり言わない方がよかったのかな……。  怒らせるつもりは無かった。俺はいつも考えが浅くて、他人を怒らせてしまう。ここにきて叱られることがなくて、安心しきっていた。俺はやっぱり駄目なんだ。  蔵之介の目から涙が溢れた。感情的に泣きじゃくるわけでもなく、自然と溢れていた。  蔵之介はそれを拭いて、ゼノスに目を向けた。  ゼノスの首元に手を伸ばして当てた 「ごめんね、ゼノス。俺が首を絞められるはずだったのに」 「なんで言わなかった!?」  ビアンカの部屋で、ビアンカはソファに座って報告書を確認していた。  しかし、それが海に散らかされ、部屋の中に散乱している。  部屋に入ってきて、突然怒りだした海は説明もなくビアンカの座るソファへ向かい、テーブルを蹴とばした。ビアンカの前に立ち、背もたれに手を置き海はビアンカを威嚇するかのように睨みつけた。 「蔵之介にも黙っておくよう言ったのは僕だ」  何を言わなかったか、その説明が無くても子供のことだろうとビアンカは察してそういった。 「なんで勝手に……」  海は背もたれにしわを残しそうなほど強くにぎり、の悔しそうに言うが、王を相手にそれ以上言えるわけもない。いつか蔵之介が子供を作るのは分かり切っていたこと。しかしそれを知らないうちにされたことに腹が立っていた。 「蔵之介はジュブナイルじゃないのか?」 「それも聞いてないのか、アダルトになったんだよ。バードイートに襲われた日の夜。海はバードイートに負けたことで、部屋に閉じこもってたから情報を耳にすることが無かったんだろうな」

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