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144話

 ゼノスが目を覚ますと、心配そうにのぞき込む蔵之介の顔が一番に目に入った。 「ゼノス!」  顔をきょろきょろさせて周りを見るゼノスを見て、蔵之介は安心して泣きだした。 「ごめんね、ゼノス」  そういいながら蔵之介を強く抱きしめた。 「蔵之介様、どうされたのですか?私はどうしてここで寝て……」  ゼノスは何があったか思い出せず、きょとんとしていた。 「プレゼントの中にあったマフラーが、ゼノスを襲って首に巻きついたんだ。ビアンカのマフラーをの上からまいたら、それがおさまったんだよ」  蔵之介は涙をぬぐいながら、ゼノスから離れた。 ゼノスはマフラーをしていることに気付き、慌てて外そうとする。 「駄目だよ、まだしてて首がまだ治ってないから」 「いけません。これはビアンカ様が蔵之介様の為に作ったマフラーなのに、帽子も貸していただきました。そんな何度もお借りするわけには行きません」  ゼノスは弱々しい声で言う。 「良いから今日はしてて。ゼノスの首に傷跡が残ったら俺、ゼノスと目を合わせられなくなっちゃうから」  蔵之介に強く言われ、ゼノスも断り切れず頷きそのまま巻いて置くことにした。  蔵之介が安心して、ベッドに座るとドアがノックされた。 「誰?」  蔵之介が声をかけると「俺だ、入っていいか?」と海の声がした。怒って出ていったが今は落ち着いているようだ。 「私が行きます」  ゼノスが言って、ベッドから降り靴を履いてドアへ向かった。ゼノスはふらついた様子もなく、蔵之介は安心して立ち上がった。  ゼノスがドアを開くと、海は驚いていた。 「目を覚ましたのか」 「そんなずっと寝てられませんよ」  ゼノスは強がってみせるが、声がまだ少し出しずらそうだった。海はゼノスの頭を撫で部屋の中へ入る。 「いい心がけだな」  海はゼノスに言って、蔵之介の前まで歩いていき、数歩前で立ち止まり片膝をつき座り頭を下げた。 「海?」  突然のことに蔵之介は驚き、戸惑っていていた。 「蔵之介、知らなかったとは側にいられなくてすまなかった。さっきもカッとなってあんな態度を取ってしまったのは許してほしい。今日からまた俺は蔵之介のキーパーに戻る。前の様に負けたりはしない」  海はそういって、立ち上がった。海は真剣な面持ちから笑顔へと変わる。 「これからなんでも相談してくれ。人間界の物でも必要なものがあればビアンカに許可を貰って買ってくる。妊娠をすれば蔵之介は今後動きにくくもなる。動けないと狙われやすくもなる、傍で守れるキーパーが必要になるだろ。必要があれば俺なら運ぶこともできる、ゼノスにはそれができないだろう?」  ゼノスが急に言われ、ムッとした。

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