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148話 出産開始
吐き気などはないが、体が重いせいで必要以上に動く気になれなかった。妊娠って大変なんだなと、ぼんやり考えていた。でも自分にはゼノスが付きっ切りで側にいてくれるし、お風呂も着替えも手伝ってもらえる。最初はゼノスに全部任せるのが違和感だらけだったけど、今となってはかなり助かっている。
歩きずらい場所では運んでもらったり、生活でやりずらくなったことが増えると海も助けてくれていた。優しくされると蔵之介はたまに泣きそうになって、その度に海に笑われていた。
「ゼノス、ありがとう」
「お礼なんて必要ありませんよ」
ゼノスは笑顔で言う。最初に必要ない言われてから、ゼノスにお礼をいう事は無かった。けど今は無性に
「言いたくなっただけだから、気にしないで」
「海もありがとう」
少し離れたところでハンドグリップを使い握力を鍛えていた海は「ああ」と短く返事をして顔をそらした。その耳が赤いのは見て取れ、照れているのが分かる。。
蔵之介はベッドに頭を乗せ再び目を閉じた。
さらに数日が経ちその時が来た。
「ん!?!!?」
蔵之介はソファーにすわり背もたれに寄り掛かっていると、突然声を上げた。
「どうかしましたか?」
隣で本を読み聞かせていたゼノスは、何事かと本を閉じた。海も気付いて、腕立ての状態からすぐに立ち上がった。
「なんか、お腹の中が変かも」
「出産が近付いてるのかもしれません。ビアンカ様をお呼びします」
「俺が呼んでくる」
と海が言ってすぐさま部屋を出ていった。
ゼノスは蔵之介の隣にかがみ、お腹に触れ確認する。
「動いてますね」
「うん、なんかもぞもぞしてて気持ち悪い」
蔵之介は涙目で、口元を抑えていた。
「大丈夫です。すぐにビアンカ様が参られます」
ゼノスが蔵之介の背中をさすっていると、ドアがノックされすぐに開いた。
「蔵之介、産まれそうなのか?」
ビアンカはすぐに蔵之介の元に駆け寄ると、蔵之介は頷いた。
「よくわかんない。気持ち悪い、お腹の中で何かが動いてるんだ」
蔵之介は涙目で言った。
「すぐに準備する。ピーと海が今手配をしてる」
ビアンカはそれだけ言うと、蔵之介の背中と膝の下に腕を回し持ち上げた。
ゼノスと共に部屋を出て出産用に準備していた部屋に向かった。
部屋に入ると、中は畳が並べられた広い部屋だった。部屋の四つ角には角を取る様に斜めに台座が張られている。入ってきた方向以外の三方向には特殊な蜘蛛の形をした置物が置かれている。中央には太い縄がぶら下がっていいた。
「この部屋は安産祈願の為に作られた。守られた場所だ」
ビアンカは部屋の中央まで行き、紐の横で蔵之介を下した。
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