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151話

「大丈夫、上手くいってる」  ビアンカは蔵之介の背中に手を添えていた。  汗が出るとビアンカが冷えたタオルで拭いてくれて、それが心地よい。  いきんでは休み、それを何度か繰り返すと、一気に粘液の音とともに子供が外へと飛び出した。子供は準備されていた座布団に落ちた。  蔵之介は荒い呼吸を繰り返し、振り返ろうとしたが、ビアンカは蔵之介の頭をなでそれを止めた。 「今はまだ見ない方が良い」  ビアンカに言われ、その意味が分からないがすぐに次の子供が出てくる感覚が続きそちらに集中した。  一人目の子供はすぐに運ばれ桶にためられたぬるま湯で洗われる。  産声などは聞こえない。ちゃんと生まれたのだろうかと蔵之介は不安になるが、ビアンカを見るとほほ笑んでいた。 「大丈夫元気そうだった」  ビアンカに言われるが、それに返事をしている余裕などはなかった。安定した呼吸を繰り返そうと蔵之介は必死に集中した。他にこの不安を紛らわす方法が分からなかった。 「んうっ」  蔵之介は声を漏らし、体をこわばらせた。先ほどとは違い、勢いよく子供が出そうで少し堪えた。そして子供が出やすいよういきむと、子供がゆっくりと出てきた。ぐちょりと音が聞こえる。 「大丈夫二人目も無事だ」  ビアンカに言われ、深く呼吸をくりかえす。  蔵之介は反射的に後ろを振り返った。そして目に入った物を見てビアンカが一回目に止めた理由を理解した。  座布団の上には黒い手のひらサイズの塊が落ちていた。それは少しずつ動き足がその場でうごめいている。人の形はしていなかった。 「っ!!」  蔵之介が声にならない悲鳴をあげ、ビアンカは慌てて蔵之介の頭を抱きしめた。 「大丈夫、あれで問題はない。ちゃんと元気に産まれている」  人の形をしてなかった。  蔵之介は体を震わせた。  俺は何を産んでいるんだろう?体内にあんなよくわからないものがいたの?今もまだ体内にあんなものが……  蔵之介は息を荒くする。血圧が上がりどうにかなりそうだった。  ビアンカは様子の異変に気付き、蔵之介の胸と首に治癒糸を張り巡らせた。そしてビアンカに背中を撫でられると呼吸が落ち着き蔵之介は目を閉じた。 「大丈夫か?蔵之介」  ビアンカは心配そうに蔵之介の顔をのぞき込む。蔵之介は涙をこぼした。  こんなの、こんな感覚知らない。どう言葉にすればいいのか、どうすればいいのかも分からない。  蔵之介は頷いた。  その後もそれが繰り返された。一人目が出るとそれに連なり出てくるというのは本当で、あとは早かった。9人目までそれが繰り返され、最後の一人と出てくるのを待っていた。  しかしなかなか出てこない。

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