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153話
海はしばらくビアンカを睨み、手を離した。ビアンカは蔵之介のからだに治癒糸を張り巡らせると、蔵之介も安心したのか目を閉じ眠りに落ちた。
「海、ヴィンター師を呼んでくれるか?ヴィンター師にも蔵之介の状態を確認してもらいたい」
「分かった。すぐに連れてくる」
海は部屋を出ていった。
ビアンカはベッドに座り、蔵之介の頭を撫でた。
「お疲れ様。よく頑張ったな」
ビアンカが言うと、蔵之介は目を少しだけ開けて、ビアンカに目を向けた。しばらく見つめ合い、蔵之介はゆっくり目を閉じた。
蔵之介の心音は驚くほど安定している。
「ビアンカ王」
ピーが歩み寄る。
「医師に確認をお願いしますか?」
ピーの後ろに医師が立っていた。ビアンカは頷き立ち上がり避けると、医師たちが蔵之介の体を確認した。「状態は安定している。何の問題もなさそうだ」と医師は告げた。
ビアンカも安心して頷いた。そして周りの者たちに声をかける。
「ここに立ち会ってくれた者たち、協力してくれた者たちには心配をかけた。暗黙を守り手助けしてくれたことには感謝する。ここまでの礼は後日しっかりさせてもらう。今後も子供たちの事を一緒に見守っていて欲しい。よろしく頼む」
ビアンカの類い稀な感謝と敬意に、そこにいた者は膝をつき頭を下げた。ビアンカは蔵之介を優しく抱き上げ、部屋へと運んだ。
ビアンカは蔵之介を部屋のベッドに寝かせると、ベッドに座る。ずっと外にいたゼノスは心配そうに蔵之介を見ていた。
「蔵之介は大丈夫だ。子供も9人産まれ、全員元気だ。ゼノスにもここまで蔵之介を支えてくれたことに感謝する」
ゼノスは驚き、膝をついて頭を下げた。
「身に余る光栄です」
ビアンカはほほ笑み、蔵之介に目を移す。蔵之介の頬を撫で、唇を重ねた。
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