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155話
家のことを任されてる身として遊んでいる暇もない。帰ったら掃除をして、風呂とトイレも掃除して、洗濯ものを取り込んで、そして夕食の買い物と料理。やることは多かった。
窓をあけ、部屋の中に掃除機をかけていく。全体的に掃除機をかけ終えると掃除機のフロアノズルを外し部屋の隅っこのごみを吸っていた。そこに急にでかい蜘蛛が飛んできた。
「うわっ」
突然の事に驚き思わず蔵之介は蜘蛛に掃除機を向けてしまう。するとズボッと音を立てて掃除機の中に蜘蛛が吸い込まれていった。
「あ!うわ!海!」
吸い込まれた蜘蛛は青かった、思わずその名前を叫び掃除機のスイッチを切って掃除機のパイプをのぞき込む。しかしそこに蜘蛛の姿は見えなかった。
「どうしよう中まで吸い込まれちゃったかな?」
慌てて、掃除機の中を開きハサミで紙パックを切り開いた。しかしそこにも蜘蛛は居なかった。
「あ、あれ?」
蔵之介は困っているとパイプの先から蜘蛛が顔を出し、飛び出した。蔵之介を見るとその場で元気だとでもいうかのように、くるくると歩き回った。どうやらパイプの途中で踏ん張ってとどまっていたらしい。
蔵之介は安心し、ペタンとその場に座り込んだ。
「よかった。元気そうだね」
蔵之介はその蜘蛛をまじまじと見て、手を伸ばした。その体についたほこりをつまんで取り覗くと、蜘蛛はぴょんぴょん跳ねてカーテンの上まで登って行った。
「海だよね?」
そう呼んでも何の反応もなかった。違うのかな?と思い首を傾げる。
掃除機の紙パックを切ってしまったので新しくつけ直し、掃除の続きを始めた。
「海ってなんだっけ?」
掃除機を見て天井近くにいる青い蜘蛛に目をやるが、海はそこでじっとしていた。大きい蜘蛛だが、害はなさそうなのでほっとくことにした。もしかしたら男が帰ってきたら殺そうとするかもしれない、それまでには追い出さないとと考えながら蔵之介は買い出しに出た。
スーパーがいつもより込んでいて、安売りもあり、レジに想像以上の行列が出来ていた。時間がかかってやっとの思い出スーパーを出た。時間はかかっても安売りでいろいろ買えるチャンス。それを逃すわけにはいかない。居候の身としては安くお金のやりくりをしなければならない。
両手に大きな袋を持ち、帰宅する。
「ただいまー。重かった……」
蔵之介は袋を持ってキッチンへ向かった。袋をそこにおいて、上着を脱いだ。
「お帰り」
既に帰宅していた男がリビングの椅子に座り、顔をこちらに向けた。
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