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158話 迎えに来たゼノス
「海どこ行ったんだろう?」
「そのうち帰ってくるだろ」
村田は焼いた魚とご飯とみそ汁に昨日の残り物の煮物を並べた。
「うん」
蔵之介はそれを食べて風呂に入り眠りについた。しかしぐっすり眠れず夜中に目が覚めた。
リビングに向かい、カーテンを開ける。すると目の前の高さの窓に海が張り付いていた。
「海」
蔵之介は慌てて窓を開けた。
すると海はぴょんと部屋の中に飛び込んだ。
「どこに行ってたんだよ、心配したんだよ」
海は体の向きを蔵之介に向けた。よく見ると背中に白い小さい蜘蛛を乗せていた。眠っているのか白い蜘蛛は動かなかった。
「何?その蜘蛛」
蔵之介が触ろうとするが、海はぴょんぴょんとその場で跳ねた。すると背中の蜘蛛はころりと背中から落ち、床に転がった。
「アズチグモかな?」
突然の事に白い蜘蛛は飛び上がり、その場でくるくる辺りを走り回った。海と、蔵之介の存在に気付くと、白い蜘蛛は突然糸を吐き出した。その糸は宙を舞って白い蜘蛛にかかるとそれはふくらみ、人間のサイズほどになった。
「え、なになになに!?」
蔵之介は驚いて尻もちをつき後ずさる。
その蜘蛛が糸を払いのけると、そこからは小柄な少年が現れた。白い着物の様な服を着て、膝をつき頭を下げた。
「蔵之介様!どうかお戻りください」
その少年は震えた声で言って、荒く肩で呼吸をしていた。泣いているのか鼻を啜った。
「な、なに?」
蔵之介は海と少年を交互に見た。海は歩いて、テーブルによじ登った。
「蔵之介様、何もわからず混乱されていることでしょう。説明致します」
少年は顔を上げると、両目から涙を流していた。
少年は説明しようとするが泣きじゃくって、何を言っているのか分からなかった。蔵之介はティッシュを持ってきて少年の鼻をかんでやる。
「ゆっくりでいいから、落ち着いて」
蔵之介が言うと少年は頷き涙をぬぐった。
「取り乱してしまいすみません。蔵之介様の顔を見たら安心してしまって」
見覚えのない少年だが、どうやら蔵之介の事を知っている様だった。
「それで、君は?」
「はい、私はゼノスと申します。蜘蛛の世界から、蔵之介様が生贄に差し出された世界から来ました。蔵之介様はこちらでの生活はまったく覚えていらっしゃらないかと思いますが」
少年はゼノスと名乗り、正座で姿勢をただした。
「うーん、生贄に差し出されたのは聞いたけど、何があったかは覚えてないんだ。その前のことも」
蔵之介がいうと、ゼノスは両手を膝の上でぎゅっと握った。
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