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163話
「だから、これは、こわいやつだよ!!!」
蔵之介は叫び吊るされた糸を見る。どう見ても糸の編み方が甘い。所々細くなり今にも千切れそうだった。
それを伝えようとした瞬間ぶちぶちと蔵之介を吊っていた糸が千切れた。
「だから駄目だって!!!!!」
蔵之介が叫ぶが子供は何が起きたのか分からない様子で蔵之介が落下するのを眺めていた。
「ママー」
呑気な声が聞こえるが蔵之介はもうどうすることもできない。
もう嫌だ……。
蔵之介がそう思っていると、体は何者かに受け止められた。
目を開くと、海が蔵之介の体を抱え近くの屋根の上に飛び降りた。
「海……恐かった……」
蔵之介は目に涙を浮かべ言った。
「俺もだ、ヒヤッとした」
海はそういって、屋根から飛び降りた。地面に蔵之介を下し、体についた糸をほどいた。
蔵之介は先ほど自分が居た場所を確認しようと頭を上げると、そこには蜘蛛の巣から落ちそうになっている子供の姿が見えた。
「あ、待って!止まって!」
蔵之介が叫ぶが、子供は蜘蛛の巣から落下した。
海はすぐに飛んで子供を受け止め、屋根へと降り、塀、地面へと降りた。
蔵之介はすぐに駆け寄り、子供の頭を撫た。
「よかった無事で」
「もう、自分で着地で来たよー」
子供は不満げに言う。蔵之介は子供を海から受け取り抱きしめた。蔵之介に抱きしめられ、子供も蔵之介に抱きついた。
「でもちょっと恐かったかも」
そう言って、蔵之介に抱きつき甘えるように顔をこすりつけた。
アパートに戻ると、部屋の中は乱れ、割れた窓ガラスが散乱していた。
そこには縛られ意識のない蜘蛛と、村田、そして6人の子供たちが居た。
子供たちは村田の前で半べそをかいて泣いていた。
村田の足元でゼノスはまだ寝ていた。
子供たちは蔵之介を見るや否や、「ママ!!」と一斉に叫んで蔵之介に駆け寄った。
蔵之介は一人抱きしめた状態でかがむと、その一人は降りて蔵之介の後ろに回った。
その隙間に我先にと入り込むように6人が縋りついてきた。
蔵之介はまとめて抱きしめ、一人ひとり頭を撫でた。
「この子達、俺の子供なの?」
「ああ、だろうな。でも困ったな……。こんな所に来るなんて」
海が言ってゼノスに近付き起こそうとゆすった。
「生贄を取り戻そうとするのは、身内だけじゃないって事か。人間界に生贄を求めた蜘蛛たちが来たら大変なことになる。」
村田は困った様に眉を寄せ、腕を組んだ。
そしてどこかに電話をかけていた。
蔵之介は自分に縋って泣く子供たちを見て、正直戸惑っていた。しかし子供の暖かさに触れ、ビアンカの暖かさを鮮明に思い出せた。
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