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165話 蔵之介が見たビアンカ

「蔵之介!蔵之介!」  ビアンカの呼ぶ声が部屋に響き続ける。蔵之介の肩をゆするが蔵之介の目はうつろで、起きているのか寝ているのかも分からない。ビアンカはそっと蔵之介をベッドに戻し抱きしめた。 「心音では意識はあるはずなんだ」  ビアンカは焦った様子で蔵之介の頬に手を当てた。 「心が耐え切れなかったのかもしれないな」  ヴィンター師がひげを撫でながら言った。 「体の方は問題なさそうだ。ただ、人間の男はそもそも子供を産むための母体にはならない運命だ。それなの子供を沢山産んだんだ。説明があったにしても、実際体験するのとは全く違うものだからな。  さらに言えば蔵之介は人間でいえばまだ半分子供だろう。心がついて来ない上、言葉もつたない。ビアンカにその気持ちを話すこともでき無かった。そして心への神経を途絶えさせたんだろう」  ヴィンター師の言葉に、ビアンカは目から涙をこぼした。  それに気づき、ピーもゼノスも驚いていた。しかし海だけは違った。怒りを露にし体を震わせるした。 「だから大丈夫かって聞いただろ。それをなんだよ!信じろって言ったのはお前だろ!」  海がビアンカを怒鳴りつけ、海はビアンカの胸ぐらを掴んだ。 「勝手に子供相手に子供作って、何考えてるんだよ!子供を守るのが大人の役割だろ!こんなことしてまともじゃない!しかも愛してる相手を、大丈夫だって曖昧な言葉で騙してこんな状態に追い込むなんていかれてるとしか思えない!ちょっと考えれば分かることだろ!」  ビアンカに言い迫る海の肩をピーが掴み少し引いた。海はピーを少し見るが、すぐにビアンカに目を戻した 「すまない……」  ビアンカの頬には涙が伝っていた。 「愛する気持ちを止められなかった。蔵之介を前にすると胸が熱くなり心も痛んだ。どうなるかも考えられなかったんだ……」  ビアンカは唇を振るわせた。 「愛は人を狂わせるなんてよく言ったもんだな」  海はため息をつき、ビアンカの襟を突き放すように押し離した。 「ピーはなぜ止めなかった?お前なら冷静になれただろ」 「私はビアンカ王の味方です。ビアンカ王望むことを可能な限りかなえるのが役割です」  海はため息をつく。 「だとしたらゼノスの返事も同じだな」  ゼノスは顔をそらし手を後ろに回した。  それ以前にゼノスは二人が何をしているのか理解していなかっただろう、海にそこへの期待は眼中になかった。 「海、起きたことだ。問題はこれからどうするかだろう」  ヴィンター師は蔵之介に歩み寄り頬を撫でた。「ん?」と蔵之介の頬を何度か撫で何かを探っていた。

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