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169話 ビアンカの決断
ビアンカは、ベッドで眠る蔵之介を見て目を閉じた。深呼吸をして目を開く。
「蔵之介を人間の世界に帰そう」
ビアンカが言うとピーは驚きビアンカの背中を見つめた。こんなこと言うなんて相当だ。
「いいんですか?」
「よくはない。けど、今は起きたことを忘れ、人間の世界に返した方が心は休まる」
ビアンカは優しく蔵之介を見つめた。
「蔵之介様にもう会えない可能性もありますよ。何年もかけて手に入れた唯一の存在なのでしょう?それに生贄を送り返すなんて国民が何というか」
「その罰は僕が全部かぶる。ほかの皆に迷惑はかけない」
ビアンカは意は揺らがないといった様子で、立ち自分の右手のひらを見つめた。
「いけません、どんな拷問を受けるのかも分かりません。生きながら殺された生活を送ることになるかもしれません」
「構わない、今の蔵之介も同じ状態だ。そんな状態にしてしまった僕はその罰を受ける義務がある」
「そんな義務はありません!」
「受けないと僕の気が済まないんだ」
ビアンカは言って蔵之介に歩み寄り抱きしめた。
「すまない蔵之介。すぐに楽にする」
ビアンカはそういって糸を操作した。蔵之介の頭にその糸は伸びていき、毛穴から脳へと伝っていくビアンカは糸を伝い記憶の操作をしていると、蔵之介の部屋のドアが開いた。
海が入ってきてビアンカを見ると駆け出し殴りかかった「何をしてるんだ!?」殴った拳はビアンカの頬に当たり、ビアンカの体は飛び、転がり倒れた。
「まずい!」
ピーが叫ぶと、ビアンカの手から伸びていた糸は吸い込まれるように蔵之介の頭の中に入っていった。そして蔵之介の体は光だした。
「なんだよこの光は!」
海が叫び光を防ぐように目を腕でかばった。
数秒後光はおさまり、蔵之介の姿は元に戻った。
海はビアンカの方へ振り返る。
「一体何をしていたんだ!?」
「蔵之介の記憶を消していた」
「は?」
ビアンカはそういって上半身を起こした。
「丁度いい、多分全部消えただろう。蔵之介の子供の頃の記憶も」
ビアンカが言って海はビアンカの胸ぐらを掴んでもう一度殴り飛ばした。
「俺のことも忘れさせたのかよ!?」
「例外はないすべて忘れたほうが、蔵之介の為だ」
「だからなんでお前はそう勝手な事ばかりするんだよ!?こんなことで蔵之介を手放す位なら最初から望むなよ!!!」
海は目を潤ませながらビアンカに掴みかかり殴ろうとするが、ビアンカは抵抗せず目を閉じていた。海は殴ろうとしていた拳を震わせた。次第に手から力が抜け、腕を下した。
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