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172話 再び蜘蛛の世界へ

 蔵之介はゼノスと子供達をつれて森に入る。 「子供達を連れてて危険じゃないかな?」 「僕たち子供じゃないよ!」 「ずぶないる!」 「ジュブナイ……?」 「ジュブナインじゃないの?」 「ジュブネイルだよ」 子供たちが次々に言うが、どれもあっていなかった。 「この子達は強いですよ。蔵之介様が去ってからヴィンター師の元にあづけられて、そこではキーパーも手伝っていましたが、キーパーから逃げるのによく走り回っていました。私よりも足の早い子がいます」 「そんなに?」  蔵之介は驚いた。  子供たちは自慢するように胸を張った。 「俺が居なくても毎日頑張ってたんだね」  蔵之介が言うと皆は嬉しそうに頷いた。 「僕ね毎日いっぱい走ったよ」 「俺は一番ジャンプ力があるて言われた!」 「僕は夜時間通りに寝て偉いって言われたよ!」 「僕の糸は綺麗だって言われた!」  そして子供たちの自慢大会が始まる。  蔵之介は一人ひとり褒めながら歩いて進んだ。  その話が落ち着くと蔵之介はゼノスに聞く 「ビアンカは今城にいるの?」 「はい、多分。私が離れた時には。  ビアンカ様の痛々しい姿を見ていられず、私は逃げ出しました。私は逃げてばかりです。ビアンカ様が蔵之介様の記憶を消した時も辛くて見ていられなくて逃げだしました」 「でもゼノスは俺の所に来てくれたじゃないか」  蔵之介が言うと、ゼノスは首を横に振った。 「それは逃げたからです。私が問題を解決しようとしたのではなく蔵之介様になんとかしてもらいたくて……、私にはそれ以外何もできません」  ゼノスは涙目で言った。 「そういう事もあるよ。だから他人がいるんだよ。ゼノスがいないと困ることだってあった。ゼノスが来なかったら俺はビアンカのことを思い出すことも出来なかった」  蔵之介はそういって、立ち止まり振り返った。 「そうだ、海にも伝えたかった事があったんだけど」 「何ですか?」  ゼノスがくびを傾げた。 「記憶を消したのはビアンカじゃないんだ」 「どういう事ですか?」  ゼノスは驚いて、蔵之介を見上げた。 「それを説明するけど、ゼノスはマフラー持ってる?」 「あ、はい」  ゼノスは懐からマフラーを取り出し蔵之介に渡した。蔵之介はそれを受け取ると首に巻き付ける。 「あと、服ってない?」  着ているのは人間の世界でのシャツとズボンだった。学校にいくつもりだったから学生用の物。 「それは、そうですね。そのままだと目立つかもしれません。私が作るのでよかったら簡易な洋服は作ることができますが」 「じゃあお願い」

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