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174話

「それなら大丈夫だと思います。ピーさんもそれを知ればビアンカを助けられるはずです」  蔵之介は考えてうつむいていた。するとそこに一人の子供がちょこんと座りに来た。蔵之介の顔を見ると笑って、蔵之介のお腹に寄り掛かった。  蔵之介はその子の頭を撫でた。 「ピーには頼れない」 「なぜですか?」  ゼノスは手元を止めた。 「ピーは医者を連れてきた。何をしてるかも全部見てたんだ。  それに、俺の部屋に様子を見に来た時、治癒糸が普通の糸に入れ替わってることに気付いていた。俺はそれでビアンカに伝えてくれると安心したんだ。だけどピーはビアンカに伝えなかった」。 「ピーさんも敵の一味なのかもしれないってことですか?」 「うん、もしかしらたら……」  蔵之介はそれ以上言わなかった。  もしかしたら脅されている可能性もある。けど、どちらにても今は信じてはいけない気がする。  ゼノスは聞いた話のことを考えながら服を作っていた。  蔵之介の膝の上をずっと占領している子供は、ゼノスのマネをしているのか手元で糸を出し、何かを編んでいた。しかしそれは何かを作る為ではなく、ただマネを仕様としているだけで糸の塊になっていった。  その子は最初に蔵之介を吊るし落とした子。甘えん坊な子のようだ。 「君の名前は?」 「アウルム」  顔を上げて蔵之介を見て答えた。  すると他の子供たちも手を挙げた。 「俺はオール」 「僕はハウトゥ」 「僕はジン」 「俺はクムだよ」 「僕はコガネ」  わいわいと子供たちは蔵之介の服を引っ張り、呼んでと必死だった。  蔵之介は一人ひとり名前を呼んで名前を確認していく、呼ばれると子供たちは嬉しそうに蔵之介に抱きついた。  全員の名前に心当たりがあった。子供たちがまだ生まれる前にビアンカと子供の名前について話していた。その時にいくつか候補を作り、蔵之介は決定をビアンカに任せていた。  そして今聞いた子供たちの名前は蔵之介が提案したものだった。ビアンカの兄弟は皆白を意味する言葉からつけられた名前だとのことだった。なので金を意味する名前がいいんじゃないかと蔵之介は提案した。提案してから安直すぎたかなと恥かしくなって誤魔化したが、ビアンカはそれをちゃんと聞いてくれていたようだ。  それが嬉しく蔵之介は泣きそうになった。 「よし、できた!」  ゼノスが出来上がった服を持ち上げた。蔵之介は着ていた服を脱いでそれを来てみる。ゼノスがいつも通り、着付けをしてくれるが、裾が少し短かったり、肩幅が少し足りていなかった。 「あの、すみません……」  ゼノスが恥かしそうにうつむいた。

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