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175話
「大丈夫。着れるし、後で継ぎ足してくれる?」
「はい、それはもちろん!」
ゼノスは嬉しそうに頷いた。
「でもビアンカ様に会えたら作り直して貰ってください。今回は緊急時なので私が作りましたが、本来ビアンカ様の作った物しか着てはいけませんから」
蔵之介は頷いた。そしてゼノスが続ける
「先ほどの話ですが。すみません、私が蜘蛛がいることや、糸が張り替えられていることに気付いていれば、蔵之介様は回復できたかもしれないのに……」
「仕方ないよ。ワイトはゼノスがいるとき絶対に動かなかったし、糸を張り替えても全く同じ様に張り替えてて、ビアンカが張り替えに来る前に元に戻してたんだ。気付きようがない。ビアンカも俺があんな状態なのをみて辛いのかいつもと違ったし、気付けなかったんだと思う。あんな悲しんでるビアンカ初めて見た。動けなくてもどかしかったよ」
蔵之介は泣いているビアンカを思い出すと胸が痛んだ。
「城に向かおう、早くビアンカを助けたい」
ゼノスは蔵之介の着ていた服を圧縮して糸にくるみ、懐にしまった。
城がみえる崖につき城を見ると荒れ果て、無残な姿をしていた。あちこち建物がかけたり、崩れたり。どうみても誰かが住める環境ではなかった。
「ビアンカはどの辺にいるの?」
蔵之介がゼノスに聞くと、どこかから声がした。
「あれは生贄じゃないのか?」
遠くから声が聞こえその方向を見ると、5人のアダルト達が蔵之介に歩み寄ってきた。
「生贄だ!世話役もつれてるし、白の子供がいる確定だな」
「生贄が自ら戻ってきたのか?そんな話聞いたことないが、今は王もいない。卵を産む許可は必要ないよな!」
崖を背に囲まれゼノスと子供たちは、蔵之介を守るように並んだ。
「子供は生まれて間もない、世話役も大した能力もないと聞いてるさっさとやっちまおう」
アダルトの一人が言うが、子供たちはバカにされたと思い、男たちを目掛け瞬時に飛びだした。なんの警戒もしてなかったアダルト3人は、肩や腕を噛まれ、子供たちを薙ぎ払い後ずさる。子供たちは蔵之介の前に着地すると、四つん這いでまだ威嚇していた。
「やばい噛まれた!」
「毒は弱いみたいだな、引き上げて解毒して来い」
噛まれてない一人が指示をするが、その隙をついて、子供がそいつに飛びつき首の後ろに噛みついた。
「いって!止めろ!離れろ!」
男は振り払おうとするが、かむ力が強く、なかなか離れなかった。
それを見た他のアダルトたちも、恐怖し後ずさる。
「ちょっとヤバそうだな」
「俺は先に行くぞ!」
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