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176話
無事な他の二人は駆け出し逃げ出した。
「待てって!」
噛まれた男は噛まれたまま走り出し、子供を振り払う様に動いた。
すると子供は口を離して、男から離れ、蔵之介の元へ走った。
足元につくと蔵之介の足に抱き着く。
「恐かった」
「僕も恐かった!」
と蔵之介に子供たちが抱き着いた。
蔵之介は驚いていてすぐに声が出なかった。先ほどの戦いっぷりと言っていることが真逆だ。
「本当に強いんだね。助かったよ」
蔵之介は言って子供たちを撫でた。
「今城に近付くのは危険かな?」
「そうかもしれませんね。人間の世界にも蔵之介様を探しに着ているものが居ました。顔を知っている人が多いんでしょう」
「ヴィンター師の家にって行ける?」
「はい、でも山道を進むことになりまた時間がかかりますよ」
ゼノスが言うと子供の一人が手を上げる。
「僕が運ぶ」
「じゃあ俺も」
「僕も運べるよ!」
子供たちは次々と手を挙げた。
そして、子供の一人が姿は蜘蛛の姿へと変わる。そのサイズは大きく犬位のサイズはあった。それが足を広げるとさらに大きく見える。
「でかっ」
「この子達は体のサイズを自由に変えられるそうです。人型では無理みたいですが、今なれるサイズの最大が今の姿見たいです」
ゼノスが言うと
「ゼノスも足遅いから乗って」
そういって、もう一匹が姿を変えた。ゼノスは少しムッとするが、遅いのは確かだと自覚してその蜘蛛に乗った。
「しゅっぱーつ!」
人の姿の子供たちが言って、一緒に走り出す。
蜘蛛の姿になると喋れないのか、蜘蛛になった子は無言で走っていた。
途中で他の子に乗り換えて、暗くなる前にはヴィンター師の家にたどり着いた。
中に入り、縁側を覗くがヴィンター師は居なかった。
「どこかに出かけてるのかな?」
「そうかもしれませんね」
ゼノスが辺りを見て言った。
「どうしよう、ヴィンター師に相談しようかと思ってたのに」
「蔵之介様。それでしたら私が夜のうちに偵察に行ってみます。ここなら安全だと思いますし、子供たちは強いので頼りになります」
「そうだね、戦いはゼノスより頼もしいかも」
蔵之介が言うと、ゼノスはがっかりしたように肩を落とした。
「頼りなくてすみません……」
「あ、違うよ。ほら、強くなくてもゼノスは気を使えるし、いろいろ世話もしてくれるし、偵察にも行けるし」
ゼノスがしゃがんで膝を抱えた。
「そうなんです、私は小さいから偵察向きなんです……。小さいころからそうやって使われてました。スキマに落ちた指輪を取ってくれとか、排水溝に何が詰まってるか見てきてくれとか……」
ゼノスはへこんでいてこれ以上何か言ってもへこませてしまいそうだった。
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