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177話 ビアンカとの再会
「ゼノス……」
蔵之介は困ったように呼ぶと、ゼノスは立ち上がった。
「でも良いんです、それが私の取柄ですから!行ってきます!」
とゼノスは塀を飛び越え出ていった。
「元気に……なったのかな?」
蔵之介はゼノスを見送り、縁側に座った。
「夜の間にってことは朝にならないと帰ってこないんだよね」
室内で走り疲れ果てた子供たちは寝ていた。どうやってきたのかは分からないが、人間の世界まできて、そのまま森に入って城に戻って、さらにはここまで蔵之介をのせて走っていたのだから疲れないはずはない。
空を見上げると、ここでビアンカが海の腰を抱いて空に登っていったことが思い出された。暗くなり始めの空に星が見え始めていた。
「会いたいな……」
思わず呟く。笑いかけてくれて、抱きしめてくれたビアンカのぬくもりが思い出せた。
しかし、我に返り蔵之介は顔を赤くした。
あれ、なんで今俺……会いたいとか声に出てなかった?
ビアンカに会いたい、それは本心だけど。無意識に声に出てしまうなんて恥かしい。
今も鞭うたれてかもしれないのに、呑気な事考えてる場合じゃない。じっとしてられず蔵之介が立ち上がると、何か違和感を覚えた。
空気が冷たくて重い。
木陰で何かが動いてざわざわと葉が揺れた。それに気づき目を開ける。
「誰?」
蔵之介は後ずさる。子供たちを確認すると後ろで7人とも寝ている。守らないと、と蔵之介は揺れた茂みを睨みつけた。
「蔵之介」
ビアンカの声がした。そして木の陰からビアンカが現れた。全身傷だらけでふらついて、木に手を当て体重を預けている。
「ビアンカ」
慌てて駆け寄り支えると、ビアンカは蔵之介に寄り掛かった。
「会いたかった……」
ビアンカはそう言って片手で蔵之介を抱きしめた
蔵之介はビアンカを支えて、縁側へ誘導した。
縁側に座らせると、ビアンカに抱き寄せられる。
「すまない」
ビアンカはそれだけ言って、立っている蔵之介のお腹に顔をうずめていた。
「俺もごめん傍にいられなくて」
「ここは危険だ。僕と一緒に来てくれ」
ビアンカが言うが、蔵之介は首を横に振った。
「ここは安全だよ。部屋の奥でビアンカも横になって、手当てするから」
蔵之介が言うとビアンカは立ち上がる。
「危険なんだ。蔵之介が戻ってきたって町では騒ぎになってる。逃げるならここだろうと皆ここを目指してきてるんだ」
「でも」
蔵之介はためらう。蔵之介はこの相手が本当にビアンカなのかと疑っていた。ビアンカに触れても何も感じなかった。けど姿は何一つ変わらず、確信も持てない。
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