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178話
ビアンカは強引に蔵之介の腕を引っ張った。
「待って、子供たちは?行くなら子供たちも連れて行かないと危険だよ」
「子供たちは大丈夫だ。強いから」
それを聞いてビアンカの手を振りほどこうとする。がしっかりと捕まれ離すことが出来なかった。
「駄目だよ、子供達はほっておけない。ビアンカはそんなこと言わない!」
蔵之介は抵抗し、ビアンカの手に指をかけ外そうとするが、ビアンカは蔵之介の手を強く握り引き寄せた。
「大丈夫だ、前に僕に似た男に出会ったから疑ってしまっているだけだ。信じて」
蔵之介の耳元でビアンカはささやいた。
「子供たちを置いてくなんて信用できないよ!」
蔵之介が叫びビアンカを蹴るが、なんのダメージも無くビアンカはため息をついた。
「蔵之介様から離れろ!」
声がして二人が見ると見覚えのあるキーパーが3人立っていた。
「君が僕に勝てるわけないだろ」
ビアンカがあざ笑って言う。蔵之介は後ずさろうとするが、すぐに腕を握る手に力がこめられ引き戻される。
「蔵之介、今は危険だから僕から離れないで」
ビアンカは困ったような顔を見せる。
蔵之介はその表情に惑わされそうになる。
「彼はビアンカ様ではありません。ビアンカ様は今私たちが保護しています。私たちは町の騒ぎを聞き来ました。途中でゼノスにも会いました。事情を聞きこちらに戻ってきています」
「じゃあ、この人は誰?」
蔵之介が聞きビアンカを見ると、フとわらった
「君のビアンカだよ」
そういってビアンカは蔵之介にキスをした。
いつもと違うキスの感覚に蔵之介はビアンカを押した。しかし、強引に口を開き舌を絡ませてきた。
蔵之介は抵抗したが離れては貰えず、ビアンカの舌を噛んだ。
するとビアンカの口は離れ数歩後ずさった。
「僕のキスが気に入らなかったのか?」
ビアンカはほほ笑み、しかし蔵之介を睨みつけた。
「蔵之介!」
そう叫ぶビアンカの声が聞こえた。
目の前のビアンカからではなく別の方向から。その方向を振り返る。
そこにはもう一人のビアンカが居た。声も見た目もおなじで、同じように怪我もしている。動けなくされてい時の糸の巻き方と同様、一寸の狂いもなく傷の位置は全く同じだった。
しかし、そのビアンカは目を赤く光らせていた。
「ビアンカ?」
「お前のどこがビアンカだっていうんだ?化けるにしてもその眼の色なんとかしないと」
蔵之介の隣にいるビアンカが笑って言った。対峙するビアンカの赤い目が強く濃く色が増す。
「蔵之介はお前には渡さない!」
目が赤いビアンカが糸を出した。しかし隣にいたビアンカは蔵之介を抱え飛び上がる。
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