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179話 本物のビアンカ

「わっ!!やだ!落ちる!!!」  蔵之介は暴れてビアンカを肘で打ち、蹴とばしてしまった。それと同時に体が離され落下する。 「やだやだやだ!!!」  騒ぐ蔵之介を横目にビアンカは屋根の上に着地した。肘が頬に当たり、不満そうに頬をさすった。  落下する蔵之介の体は途中で受け止められ、地面に着地すると蔵之介を受け止めた者は立っていられず膝をついた。  白い髪が舞い、蔵之介を抱き寄せた。顔が見えないがその隙間から目の赤い光が見て取れた。 「ビアンカ?」 「すまない蔵之介。君を守れなかった」  ビアンカは蔵之介をその場におろした。 「そんな事……」  蔵之介は言おうとするが、ビアンカは言葉を続ける。 「キーパー、蔵之介を守って逃げてくれ、こいつの相手は僕にしかできない」  キーパーは頷き、瞬時に蔵之介を抱え走り出した。 「ビアンカ!」 蔵之介が叫ぶとビアンカは顔だけ振り返り横目で蔵之介を見た。しかしそれもすぐに木の向こうに消え見えなくなった。 「まって、マフラーを。これ治癒糸でできてるからビアンカの怪我を治せるから!」 「いけません今戻っては危険です。怪我をしているビアンカ様がどれくらいもつかわかりません」 「もつかわからないって、負けるって事!?死んだらやだよ!」 蔵之介はキーパーから離れようと暴れるがキーパーは蔵之介に糸を巻きつけ離れないようにした。 「おとなしくしてください。安全な場所に運んだら私も助けに向かいます」 「でも……」 「貴方はビアンカ様の大事な方です。貴方が生きていないとビアンカ様は生きていられません」  キーパーに真面目な顔で言われ蔵之介は顔を赤くした。 「そんな事そんな真面目な顔で言わないでよ!恥かしいな!」 「恥かしくなんてありません。蔵之介様は愛されています」  蔵之介はそれを聞いて、気持ちを落ち着かせ、ため息をついた。戻ってくるときに多少の不安はあった。ビアンカに拒絶されたらと思ったらここに来るのもためらわれた。  けどビアンカは俺が戻ってきと知って来てくれた。それを思い返すと胸が暖かくなるのを感じた。 「本当に?」  蔵之介はキーパーに捕まる手の拳を強く握りしめた。 「本当にビアンカは俺のこと、待っててくれたの?」 「いえ、待ってはいませんでした」  蔵之介はそれを聞いてうつむいた。 「今この状況で戻ってきては危険ですから。今は戻ってこない方が良いと。しかし、必ず連れ戻すとは仰っていました。言い換えれば貴方と会えるのを待ち望みにはしていました」  蔵之介はそれを聞いて顔を上げ、強く頷いた。

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