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182話 本当のパパ
ワイトが子供を一人掴もうとすると、何かに気付き後ずさり飛んだ。
そこにビアンカが着地し、蔵之介達をかばうように立った。
「本当に邪魔な子供たちだな。追いつかれちゃっただろ」
ワイトが言うと子供たちは、ビアンカを見上げた。
「蔵之介、ここから動かないで」
蔵之介がビアンカを見ると、蔵之介の渡したマフラーをしていた。
「うん」
蔵之介は頷いた。
「子供たち、バリア糸を張りなさい」
子供たちはそれを聞いて頷き蔵之介の周りにドーム状の糸を張った。前にバードイートが攻めてきた際に、ゼノスが張っていたのと似たような物だった。それに囲われると周りが見えなくなる。
蔵之介はそれに触れ確認するが、やはり子供が作ったもの。強度はそれほどなさそうだった。それでもないよりはマシなのかもしれない。蔵之介は子供たちを近くに集めかたまり抱きしめ、ビアンカが戦い終えるのを待つ事にした。
「本当にしつこいな」
ワイトが言って、ビアンカを笑って睨みつけた。
「しつこいのはお前だ」
ビアンカは言って飛びかかる。
外から戦う音が聞こえ、子供達は何度か体をびくりとさせる。
「あの人誰?」
アウルムが蔵之介に抱き着きながら聞く。
「あれは君たちのパパだよ」
蔵之介は自分で言って顔を赤くした。ビアンカが父親なのは分かってはいたが、あえて口にすると妙な照れくささがりむずがゆくなる。
「パパ?」
「パパはママを連れてた人じゃないの?」
コガネが聞いた。
「あれはパパにそっくりだけど偽物だよ。パパは君たちをぶったりなんてしないよ」
蔵之介が言うと子供たちは不安そうに蔵之介を見る
「本当?僕この前ぶたれたよいう事聞かないからって」
「俺はまだお前は弱いって蹴られて痛かった」
「僕は……そんなところに立ってるなって突き飛ばされた」
子供たちはもじもじしながらワイトにされたことを打ち明けて泣きそうになっていた。理不尽な教育という名を借りた暴力。それを受けた蔵之介はその辛さはよくわかっていた。
「辛かったね。でもビアンカはそんなことしない。ちゃんと話せば分かるから。本当のパパはすごく優しいんだよ。後でいっぱい抱きしめてもらおう」
蔵之介が子供たちの頭を撫で、頭にキスをしていく。
「なに?」
子供たちは初めてされたキスに驚き頭を撫でた。
「今のは大切な人にするものなんだ。俺にとって皆は大切なんだよ」
蔵之介が言うと同時に周りに張っていた糸が急に飛び散った。
「本当しつこい!」
ワイトが糸を破った様で、ワイトが飛び込んできてそのまま蔵之介を抱え先ほど向かっていた方向へ走り出した。
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