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第22話

「店長!」 元気のいい明るい声に、客の帰ったテーブルを片付けていた小林が振り向くと、晶と並んで立つ、非番の光が笑顔で手を振っていた。 「いらっしゃい、空いた席にいいよ」 あまりのくっつきように、手を繋いでいるのか?と小林は2人の手元を確認したが、手は繋いではいなかった。 「なんにする?」 「お腹ぺこぺこ」 テーブルを挟み、笑い合う2人に自然と笑みが零れる。 「あ!店長」 「どうした?光」 「あとで聞いて欲しい話しがあるんです」 「あー...だったら、閉店まであと二時間くらいあるから待っていてくれる?」 「はい!なにか注文してもいいですか?」 「もちろん」 答えるなり、メニューをテーブルに広げ、仲良くメニューを選ぶ姿は微笑ましい。 ジュースがあれば、二本のストローを差してやりたいな、と思いながら、小林は2人を見守った。 「お待たせ。外の看板を外して着替えてくるから」 「あ、看板なら、俺、外してきます!」 光が即座にOPENの看板を外しに行った。 晶がぺこり、小林を見上げたままで小さく頭を下げる。 シャツとスラックスの私服になり、二人の元へ。 「それで、話しって?」 隣のテーブルの椅子を持ってきて、同じテーブルを囲んだ。 「克服しました!店長」 嬉しそうに光が笑顔を見せる。 「克服?」 「ネコ同士だけど、掘り合えるようになりました!」 光が明るく言うなり、光、バカ!と真っ赤になった晶が光をパチパチ叩いている。 「そうか、それは良かった、て...その報告?」 「違うんです、実は...」 晶が話し始めた。 「...光もまた困ったことをしたね、安易に自宅に呼ぶだとか」 小林は思い切りため息をついた。 「すみません....」 「もし、あの二人が諦めずに来たりでもしたら、僕たち、抵抗できる気がしなくって....」 晶の言う通り、二人とも小柄で細い。 互いに抵抗は虚しいだろう。 うーん、と小林は頭を巡らせた。 「転居費用が貯まるまで、なんならうちのマンションに来る?」 「え?店長のマンションに、ですか?」 「ああ。マフィが日本に来た際に、て借りているマンション。部屋は空いてるから」 「いいんですか?そんな大切な部屋....」 申し訳なさそうに晶が問う。 「ああ。いつも使っていないし、少し埃被っているかもしれないけど」 小林はスラックスのポケットを探ると、幾つかのキーの着いた皮のホルダーから一本を光に差し出した。 「光は場所わかるよね?自由に使っていいから」 「ありがとうございます、店長」 場所を知ってる....? 二人のやり取りを晶は怪訝に見つめた。

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