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第3話 アルファとオメガとキラキラ

「顔色良くないですけど大丈夫ですか?」 「あー、ちょっと寝不足なだけです」  次の日、仕事に行く車の中で真雪さんがバックミラー越しに心配をしてくれる。  さすがにあれからすぐには眠れなかったせいで寝不足は本当。ただその理由は言えない。  オメガであることを知っている真雪さんは普段からこうやって僕の変化を細かく気にしてくれて体のことも気遣ってくれる。  頼れるマネージャーだけど、昨日の那月さんの件に関しては頼れない。  口止めされたこともあるけれど、今はまだ心配と迷惑をかけたくないから。 「体調はどうです?」 「大丈夫です」 「……それならいいですけど」  それとなく聞かれたのは普通の意味での体調と、今日の僕の体の変化のこと。  今は車の中とはいえどこで誰に聞かれるかわからないから、普段からオメガだとわかるような会話はしないように気をつけている。だから少々回りくどいけれど、言いたいことはお互いわかっている。 「いや実は、元気なんです」 「……珍しいですね」  那月さんにも言ったけれど、本来なら今日くらいから体調に変化が出てくる。はっきりといえばヒート期間に入るはずなんだ。  いつもなら朝から薬の副作用で具合が悪いのを車の中で伝える。仕事上では出さないようにしているけれど、マネージャーには万が一のため体調を知らせておく必要があるから。  だからこそ、元気と強調したことで今の僕の状態が伝わったことだろう。  真雪さんはこれから先のスケジュールを思い浮かべたようで、小さく息をついたのが聞こえた。 「となると、来週大丈夫ですかね。スペシャルドラマの撮影が始まりますし、そこに……と、それはまあ置いといて。今日は雑誌の取材二本と衣装の打ち合わせだけなんで病院予約しますか?」 「いえ、たぶん平気、だと思います」  たぶんだけど理由はわかっている。  正直に言えば、今ヒートになることが恐いと強く思っているから。誰にも言えないプレッシャーが、体に影響を及ぼしている気がする。  だってヒートになるイコール那月さんを受け入れなきゃいけないわけで。いつかそうしなきゃいけない約束だとしても、さすがに昨日の今日で受け入れられるほど僕の心は柔軟じゃない。  きっとその気持ちが響いたんだ。今まで変わらなかったヒート期間がずれるくらいには。 「いいならいいですけど、体調悪くなったらすぐに言ってくださいね」 「はい、ごめんなさい」 「なんで謝るんです?」  そりゃあ謝ることがあるから、ですが。  なにも言えない僕はただ首を振って、あとは寝たふりでやり過ごした。  自分でなんとかなることなら心配をかけずになんとかしたいんだけど、正直自分でもなにをどうしたらいいかわからないんだ。

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