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第6話
そして迎えたスペシャルドラマのクランクインの日。
何回やってもいい意味で慣れることのない初日の緊張感を、問答無用で吹き飛ばすような出来事がそこにはあった。
「ひ、ひひひひ響生さん!?」
「やあ、朝陽くん。サプライズお邪魔しまーす」
声が裏返って周りに微笑ましげに笑われるくらい驚いた原因は、僕だけに隠されていたサプライズゲスト。
僕が憧れるアイドル中のアイドルであるアニマート、その一人である響生さん。
いつもハーフアップにしている髪を下ろし、スーツを着崩した衣装はだらしなさより格好良さが勝っている。
色気の出し方を勉強しようと、何度この人の演技やパフォーマンスを見返したことか。
僕が大ファンだと公言していたから、今回のドラマに特別ゲストとして呼んでくれたらしい。
「アニマート代表で来ましたー。よろしくね」
よろしくお願いしますと握手しながら何度も頷いてしまって、また笑い声が起きる。
ああ、だから真雪さんがやけに朝から僕の体調を気にしていたのか。本当に大丈夫かと何度も聞かれた意味を今知った。
響生さんはアルファだから、もしも僕がヒート中だったら普段よりも注意が必要になる。
強い抑制剤のおかげでフェロモンが香ったことはないけれど、特段に迷惑をかけちゃいけない人だから神経質にもなるだろう。
「天河くん、大丈夫? 撮影行けそう?」
「だ、だいじょうぶれす。あ、いえ、ほんと大丈夫です! いや、緊張してます!」
監督さんからの声に思わず噛んでしまって今度こそわっと周りが沸く。
なかなか恥ずかしかったけどそれよりも嬉しさが勝って、なんとか立ち直って撮影が始まった。
結局撮影初日のその日は響生さんと緊張する僕によって和やかに、けれどパフォーマンスは最大限にいいテンポで過ぎていった。
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