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第11話

「それで相手は誰だろうと考えた時に、那月さんのスキャンダルが出てからずっと元気がなかったことと、そもそも様子がおかしかったのが那月さんとの撮影がすれ違った日からでしたので、予測を立てました」  反省して赤面する僕をよそに、真雪さんはあくまで淡々と報告を続ける。よくできたマネージャーだ。 「社長に話すきっかけは、隠し撮りされた那月さんの写真です。よく見てみれば朝陽くんのマンションの前だったので」  僕は気づかなかったマンションの写真に、どうやら真雪さんはしっかり気づいていたらしい。さすがの観察眼だ。それともやっぱり僕が鈍いのだろうか。 「いやいやまさか朝陽がそんな、と思ったし、まさかそんなことがあるなら騙されてるんだろうと思ってそちらの事務所に抗議の電話を入れるところだったんだけど」  真雪さんの話を引き取った社長がとても軽い口調で恐いことを言うから、社長に改めて向き直ってから、なかなかギリギリだった話に身をすくめる。  危うく事務所同士の話合いに発展するところだった。 「そこでアニマートから相手が誰でも応援するように言われちゃったんだよ。朝陽は真面目に頑張ってるんだからいいだろって。三人揃って。しかも響生の件もあるから色々考えるところもあったし」  はああと多少わざとらしくため息をつく社長の言葉に、再びびくついてしまった。  あの後ほんの少しだけだけど、とても簡単に那月さんのことを説明した。  したはしたけど、それでまさかアニマートがわざわざ後押ししてくれたなんて。本当になんて素敵なアイドルなんだろう。  ……というか、和音さんは本当に響生さんの件を社長に告げ口していたのか。冗談だと思っていたのに、大丈夫だろうか響生さん。自分が事の発端になっているだけに不安だ。 「期間中は症状が軽くなり、いないとパフォーマンスが落ち込む相手はこちらの仕事的にもどうなのかと。考えたわけだよ。そういうプラスの面と、スキャンダル王が及ぼすマイナスはいかがなものかとね」  デスクに肘をつき、遠くを見て考えるそぶりを見せる社長。  その時目の端で高く上げられた手が見えた。そちらを見れば那月さんが当ててくれとばかりにまっすぐに手を挙げている。 「なんだい那月くん。なにか言いたいことでも?」 「実はこいつが首輪をしていないのをいいことに、どさくさに紛れて噛んで既成事実を作ろうと思ってたんですけど」 「ほう」 「仕事の頑張りも見ていたし、跡がついたら絶対困るだろうと思ってなんとか回避しました」 「ううん、誠実さアピールもしてくる感じか。まあ実際やってないのがなによりの証拠なんだよなぁ。本能に抗える理性の証拠にもなる」  那月さんと社長のやりとりを聞きながら、ぼんやりと自分の首筋を触った。  そういえば那月さんがやたらと肩とか腕とか噛む時があったっけ。それはうなじを噛みたくなる衝動に耐えていたのか。  そう思えばかなり無防備な状態で晒していたから、申し訳ないことをしたと思う。オメガらしくなさは自分でも承知だけど、そういうところが思い当たらないのはやっぱりいかがなものだろうか。

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