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第13章:日向彰良 〜聖なる夜〜

ワインボトル一本を空にし 他愛のないことを喋った後 静かになった空間で 目が合った僕たちは 自然のことのように唇を重ねた。 最初は穏やかだったキスが だんだん激しくなると 二人の息遣いもそれと比例して荒くなる。 呼吸を整えるように 口を離すと、 先生は 「寝室へ案内してくれますか?」 と僕の指に自分の指を絡めながら 手を握った。 僕は小さく 「はい。」 と頷くと、手を握り返して、 自分の部屋へ先生を連れて行った。 部屋に入り 先生は音を立てないようにドアを閉めると、 勢いよく僕をセミダブルのベッドの上に押し倒した。 もちろんそうされるのは初めてな上、 先生よりも背の高い自分が そうされていることに対して なんだか滑稽な気がしたけれど、 そんなことなど どうでもいいと思えるくらい 僕も先生の肌に触れたかった。 「俺のことちゃんと見て欲しいので 眼鏡はこのままでいいですか?」 先生はそう僕に確認した後、 軽くキスをし、 僕のパジャマの上のボタンを一つずつ外していった。 その下にある心臓の音は 聞こえてしまうのではないかと思うくらい 高く鳴っている。 それを振動で感じ取ったのか、 先生は、 「俺も緊張してますよ」 と、僕の手を取り、 自身の胸に当てた。 ドクン、ドクン・・・、と 掌に響く心音は 僕のものと同様に騒がしいほどの鼓動を刻んでいた。 先生は、 僕の上の服を全て脱がし終わると 露出した胸部を上から眺め、 「綺麗な乳首ですね。」 と、両手の人差し指の腹で そこを円を描くように撫でた。 感じたことのない甘い刺激に、 「あ・・・っ」 と淡い声が漏れる。 「そ、そんなとこ・・・」 「ここ触られるの初めてですか?」 「・・・当たり前です。」 「男性でもここ感じるんですよ。」 今まで、 自分は性に対して淡白な方だと思っていた。 だけど、先生から触れられるたびに 知らなかった自分を引き出されてしまう。 しばらく胸の突起物を指先で弄られていると そこに集中する快楽の逃げ場を求めて 腰がうねった。 「敏感ですね。」 「先生の・・・せいです。」 「そうですか? それは本望です。」 先生はそう言うと、 片方の胸に口を当て 生温い舌で何度も撫でるように薄紅色の先端を舐めた。 なんだかくすぐったいような、 気持ち良いような、 不思議な感覚が続く。 そこを今度は唇でムッと甘く噛まれると、 全身に電流のようなものが走り 体がビクビクっと大きく揺れた。 そんな僕の反応が気に入ったのか、 先生はそれを何度も繰り返す。 体はどんどん激しく揺れて それと同時に、 「あっ・・・あんっ・・・あんっ、ん・・・」 とまるで女にでもなったかのような 甘くて高い声が溢れた。 まさか自分からこんな声が出るなんて・・・。 僕は 恥ずかしくて 顔全体を手で覆った。 「ほら、日向さん、ちゃんと見て。 胸だけで、こんなになっちゃいましたよ。」 先生は恥ずかしがる僕をうまく誘導し、 手を顔から外させ、 視線を下半身に向けさせた。 知らない間にパジャマの下は脱がされていて 大きく膨れ上がるグレーの下着が露わになっている。 「あ、汚しちゃってますね。」 先生はいつもみたいに からかうような口調でそう言って、 先走りで黒くなった染みを 指先でくりくりと弄くり回し、更にそれを広げた。 「せ、先生・・・」 先っぽを刺激されると、 下着の中にあるものは更に肥大化し、 きつくて苦しい。 先生は全て分かったような顔をしながら 「はいはい」 と慣れたように 僕の腰が浮いせた瞬間に、 サッと下着を脱がせた。 顔を出した僕のソレは 硬直し上を向いている。 しかし先生は それには全く触れずに 僕の脚を広げさせた状態で 両腿を掴みグッと持ち上げた。 「ひゃっ!そこは・・・」 気づいた時には遅く、 僕の後ろに隠れていた秘部は 先生の目の前で露わになっていた。 男同士のセックスは その中を使うことは 知識として知っているし、 先生が男性同士のセックスでおいては 「男役」というポジションなのだろうということは 予想はしていたけれど・・・ 先生と付き合うことを決意した自分だが 自分が「女役」になることへは 未だ戸惑いと怖さがある。 以前、先生にそこを触れられた時も 正直おじけづいてしまった。 だけどそんな僕の躊躇いなど 知る由もない先生は 「可愛いお尻していますね。」 と褒め、分厚い舌を凹みに当てた。 「そんなとこ・・・汚い・・・」 僕が必死に抵抗すると 構わないと言うかのように 今度は 唾液をふんだんに垂らし 唇も使い、 吸うように舐め始めた。 クチャクチャと淫靡な音が 部屋中に響き渡る。 太腿を強く掴まれたままの僕は 身動きもできない。 しばらくし 先生は、顔と片手を離し 僕の表情を窺《うかが》いながら 今度は僕のビチョビチョに濡れた後ろに 空いた手の先でそっと触れた。 唇や舌とはまた違う感触に 後がキュッと締まる。 「力を抜いて。」 先生はそう囁いて そこに 人差し指を押し当て、 右に90度、左に90度にと 何度もグリグリと回しながら ねじ込んていった。 指先、第一関節、第二関節と 少しずつ僕の中に隠れていく。 異物感がするし 怖くて、 とても痛い。 けれど、 「初めてだと、こんなにきついんですね。」 と、 初めての人とは経験がないような言い方をされると、 僕は単純かもしれないが、 もう少し耐えてみたいと思った。 それでも、痛くてたまらない表情を 隠しきれない僕を見て 先生は 「ちょっと待っていてください」 と言い、 ベッドから降り、 玄関先においていた自分の鞄から 新品のローションのボトルと 大きめのタオルを取り出し 持ってきた。 「用意周到ですみません・・・ でも、もしも、と思って・・・」 とタオルを僕の下に敷き、 ボトルを開いて、 指を濡らすと、 そのまま同じ指を突っ込んだ。 さっきの痛さはなんだったんだ? と思うくらい 今度はスムーズに入った。 「初めてが痛いばかりだと もうしたくないって言われると困るので。」 しかめっていた僕の顔が 少しは穏やかになったのを見て、 先生は安心し、 「このまま、慣らすのを 続けてもいいですか?」 と僕の断りを得ながら、 2本3本と指を増やしていった。 3本の指が滑らかに入るようになると、 中をたくさん弄られ、 「ここが前立腺で、 日向さんの気持ち良い場所ですよ。」 とその部分をトントントンと刺激された。 すると、前に全く触れていないのに、 体の中の快感が 外に漏れてしまいそうな感覚に陥り 「あん・・・あァ・・・んっ!」 と、また高い声が出た。 「どうですか? ここ、いいでしょう?」 「んっ!あぁ・・・」 「もうそろそろ大丈夫そうかな・・・」 先生はそう言うと、指を外し、 自分の着ている服を全て床へ脱ぎ捨てた。 僕のヒョロっとした体とは違い、 綺麗に筋肉がついた男らしい身体。 割れた腹筋の下には 男の象徴が、 構えた剣のように 僕の後ろを一直線に捕らえている。 先生は手慣れたように コンドームを自身に装着すると、 ベッドの上に転がっていたローションを拾い、 それでたっぷりと濡らした。 「痛かったら我慢せずに ちゃんと言ってくださいね。」 優しい声でそう言われ、 これから行うことに対し 恐怖心を抱いていたはずなのに 僕の心は だいぶリラックスした。 先生は、正常位の状態で、 ゆっくりゆっくりと、 僕の中に入っていく。 「うあ、あぁあ!!・・・アアァ!!・・・」 そんな色気もない痛々しい声を出す僕に 先生は何度も 「大丈夫ですか?」 と声をかけてくれた。 僕は荒い息を吐きながら 「はい。」 と答え続けた。 もちろん痛みはあったけれども、 先生の愛情に包まれていると、 その痛みの先にあるものを 知りたいと思える。 目を瞑りながら 痛みに耐えていると、 「全部入りましたよ。」 と一仕事終えたように 先生は大きく息を吐いた。 その音を聞きながら 僕は目を開けた瞬間、 涙がポロポロと溢れ出た。 先生は僕の瞳から流れた水滴を 舌で拭うと 「痛かったですよね。」 と辛そうに言った。 「・・・はい。 でも、それ以上に・・・なんか・・・幸せで。」 涙を流しながら 懸命に微笑むと、先生は 僕を抱きしめて、 「俺もです。」 と噛み締めるように呟いた。 先生は僕の涙が止まると、 少しずつ体を上下に揺らし始めた。 また痛みで泣きそうになったけれど、 数分も経つと、 徐々に慣れてきたのか 辛さは軽減された。 すると、今まで痛みで隠れていた快感が いっきに押し寄せて 僕は知らぬ間に 快楽の海で溺れていた。 「あぁッ、あんっ」 先生も 出ていた僕の声色の変化に 気づいたのか 「初めてなのに こんなに感じちゃって エッチな体ですね。」 と嬉しそうに僕の頭を撫でた。 「ァ、アン、あっ、ぁんッ」 あんなに辛かったのに、 今はもう先生の動かす腰の速度が上がるたびに 中だけではなくて、 前も先生の腹に擦れて気持ちがよくて、 どんどんと自分の嬌声が大きくなってびっくりする。 「気持ちいですか?」 とか 「可愛いですね」 とか 色々な言葉をかけられた気がするが 意識が遠のくほどの悦びのせいで 全てが曖昧だ。 先生は僕の 気持ち良い所ばかりを擦るので 気づくと 「ぁ・・・あぁンッッ!!」 と今日一番の大きな喘ぎと共に 精をぴゅっぴゅっと吐き出していた。 平たい腹の上に溜まった白濁を見て、 「たくさん、出ましたね。」 と先生は下に敷いていたタオルの端でそれを拭き取った。 そして 僕の呼吸の落ち着きを待たずに 今度は奥深くに突き始めた。 「あ!う、あぁんっ!」 さっきとはまた違う刺激。 紳士さが抜け 欲情した獣のように 体を打ち付ける。 「ああぁッ!あァ!あぁっ!」 イったばかりの 敏感な身体は パンパンパンと肌と肌が弾く音と共に、 びくびくと跳ね上がった。 先生はそんな僕を上から 目を細くして舐めるように眺めている。 その視線にゾクゾクして 足の爪先がキュルッと丸まって 後ろもキュッと締まった。 すると先生は腰を激しく動かしながら 「あぁ・・・ヤバっ、・・・ンンッ」 と低い声を出し、 最奥に強く突いた。 先生は深い吐息と共に体を抜くと、 そのまま僕の上に倒れ込んだ。 沸いた汗でべっとりとした皮膚が重なり、 どっしりとした重みを全身で感じる。 ハァハァハァ・・・と 短く切れる生ぬるい息吹きが交差する隙間で 「日向さん、好きです。」という掠れた声が 耳をくすぐった。 呼吸が整うと 僕たちはベッドの中で横になり、 眠りにつくのがもったいないように 虚な目で見つめ合った。 僕は先生のグチャグチャにはねた 髪の中に手を入れ 髪を溶かすように 頭を撫でた。 自分や爽太の直毛とは違う 癖のある猫っ毛が愛しい。 先生は気持ちよさそうに 「もっとしてください。」 と甘えた。 普段見せない一面に 胸がギュッと掴まれる。 しばらくそれを続けながら 「僕も先生が好きですよ。」 と言うと、 先生は穏やかな顔で笑い、 安心したように眠りについた。 僕もそれにつられるように目蓋を閉じ 次の朝 フレンチトーストを焼くバターの香りと、 プレゼントに大はしゃぎする爽太の声で 目覚めるまで ぐっすりと眠った。

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