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第3話

 ――――......。  チュンチュン。  小鳥のさえずりがどこか遠くの方で聞こえる......。  いつの間に眠ってしまったのだろう。  オレは体の重心を前にして起きようと試みる。  だけど、慣れない場所を使って男根を咥えたオレの体は言うことを聞いてくれず、すぐにベッドへと崩れ落ちてしまった。  そんなオレの隣には、オレを毎晩のように組み敷く、大嫌いな奴がいる。  すっと伸びた鼻と、細いサファイアの瞳。  その下にある引き結ばれた男らしい薄い唇。  端正な顔立ちをした象牙色のこの男。  彼の内面を知らなければとても美しいと思うだろう。  かくいうオレも、はじめてこの男を見た時、オレよりも頭ひとつと半分くらい背が高いこの男を、不覚にも天使かと思ったくらいだ。  だけど実際はそうじゃない。  内面は悪魔のように冷たく、凍った心をしていた。  この男――ファビウスと出会うきっかけになったのは、今からちょうど一週間前にさかのぼる。  オレの名前はアール。  両親の顔も知らずに孤児院に育てられた。  孤児院の中では――まあ、うまくやっていたと思う。  曖昧(あいまい)なのは、オレの体格に少しばかり不安があったからだ。  15歳になるのに、他の奴らよりも細身で、一向に筋肉がつく気配はない。  それどころか、背も低めだし、どこにでもあるような茶色い髪に緑の目といった、特に抜け出ていない容姿。  そんなだから、雇い手がまったくなかった。  しかも15にもなれば里親に引き取られてもいい頃合いだ。  だけどオレはちょっぴり無愛想で、気に入らない奴をとことん突き放す乱暴者だった。  だからオレを指名してくれる里親もいないのが現状だ。  そんなオレでも、孤児院の中の奴らやシスターたちはとても良くしてくれた。

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