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第4話
だから、オレもその好意に甘えないで、しっかりやっていこうと考えていた、その矢先――。
だけど物事はけっしていい方向には動いてくれない。
――今から1週間前。
その日の深夜は真夏の真っ只中で、とても寝苦しかったのを覚えている。
オレがいる孤児院に、人さらいが押し込んできたんだ。
うっすらと目をあけていたオレの視界が急に真っ暗になったかと思ったら、息苦しくなって、身動きがとれなくなった。
袋に詰められたんだ。
車のエンジンの音がしたし、ガスくさかったから、オレはそのまま連れ去られてしまったんだって、理解した。
それでも、オレは孤児院の中じゃ、けっこうな行動派だ。
車が停止しているスキを狙って袋から抜け出し、人さらいから走って逃げた。
だけど人さらいたちも黙ってオレを逃がしてくれるはずもない。
オレがいなくなったことにすぐ気がつき、追いかけてきた。
その日は、金色に輝く満月で、でこぼこした道を、走って逃げられるくらい、明るい夜だった。
一生懸命走って逃げるオレ。
そのオレよりもずっと背が高い人さらいたちは、あっという間に目と鼻の先まで追いついてきたた。
それでも逃げ切ってやろうと、息を切らして走り続けたその時だ。
ファビウスに出会った。
月明かりに導かれるようにして立っていた彼に救いを求めたのが悪かった。
後悔したのは後のことで、その時は彼に助けを求めるしか方法がなかった。
すくなくとも、人さらいたちに捕まるよりはずっといいと思ったんだ......。
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