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第5話

 それに、彼はとても綺麗だった。  オレよりもずっと落ち着いているファビウスの年齢はたぶん30そこらだろう。  象牙色の肌は満月の光に照らされ、まるで発光しているようだったし、絹糸でできたみたいなプラチナブロンドもすごく美しかった。  道は薄暗い。夜なのに、どうしてなのか、彼の目の色がサファイアだってわかったし、肩幅もあって凛々しくて、だけどすらりとした長い手足や体に目を奪われたんだ。  ――深夜遅く。  血相を変えて逃げるオレを見たファビウスは尋常じゃないと理解したらしい。  手を差し伸べて、オレを屋敷まで連れ帰ってくれた。  それがいけないことだと知らずに......。  その日、ファビウスはオレを天蓋のついたこの部屋で休ませてくれた。  疲れがとれた翌朝。  食べ物を与えてくれたその時に、オレの親のことを尋ねられた。  だけどオレの窮地を救ってくれた人だ。  きっとオレを孤児院に返してくれると思った。  だからオレは親がいないことと、15になった今でも里親が見つからず、孤児院にいること。  里親が見つからない理由である、自分の性格なんかもちょっとばかり話した。  ファビウスは少し考えるようにして部屋を出て行ったその日の夕方――。  人が変わったように、変貌(へんぼう)した。  今まで、優しくしてくれた彼の姿は消え去り、ほんの少し穏やかだった目つきは鷹のように鋭くなったんだ。  その日から、オレはファビウスに組み敷かれ、男なのに女性のように扱われる日が続いている。

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