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第6話
「アール、今日も遅くなる」
時刻は昼あたりだろう。
太陽の光がさんさんと降り注ぐ。
昨日の深夜から今朝方まで延々と組み敷かれ続けていたオレは、体がだるくて指先さえも動かせない状態だ。
片や、ファビウスは何事もなかったように平気な顔をしてベッドから起き上がり、パリッとしたカッターシャツにネクタイをしめてスーツを着こなしている。
当然のことながら、ぶっきらぼうな言い方に返事をすることなく、オレは寝たふりを決め込んだ。
これはオレにとって、ささやかな抵抗だ。
そんなオレには関心がないのか、ファビウスは何も言わず、そのまま部屋を後にした。
なんだよ!!
夜はあんなにオレを玩具みたいに扱って執着を見せるのに、昼間は興味なさそうにオレを見下ろしてさ!
なんか、すっげぇムカつく!!
なんとかイライラを振り切ろうと、だるいと訴えている体を無理矢理起こして寝返りをうつ。
そんなオレの枕元には、ラップでふたをしているサンドイッチが入った平皿とペットボトルがひとつ、置いてあった。
――ファビウスはものすごくイヤな奴だ。
人権を無視してオレを玩具みたいに扱ってくる。
なのに......。
オレが飢え死にしないよう、毎日こうして食事を置いていく。
そういえば、オレを助けてくれたあの時も嫌な顔ひとつもしなかったっけ......。
いやいや、ファビウスはきっと、目の前で死なれるのが嫌なんだろう。
自分の屋敷から死体が出たら気持ち悪いし、警察沙汰にもなるもんな――。
だからこれに特別、深い意味はない。
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