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第8話
『孤児院』ってなに?
『雇った』ってなに?
オレの頭に嫌な予感が過ぎる。
「なぁ、さっきの話。どういうこと?」
オレはベッドからむくりと起き上がると、男に尋ねた。
「い、いや......はは......ファビウスくんは、どこかな~?」
男は、そんなオレを無視してあさっての方を向いた。
相手はどうやらオレがいないと決め込むようだ。
だけど、そんなこと、できるはずがない。
だって、さっき、たしかにこの男の口から聞こえたんだ。
『孤児院』っていう言葉を――。
その言葉はファビウスだけに関係があるなんて思えない。
「おい、白々しいこと言ってんなよ!?」
オレは起き上がり、見知らぬ男をジロリと睨 む。
「あ~、僕が言ったこと、ファビウスくんにはナイショね?」
男は、薄い唇に人差し指を乗せて、そう言った。
オレは、コクコクと何度もうなずくと、男はようやく観念したかのように唇をひらいた。
「僕はグエン。私立探偵をしているんだ。それで4日前、ファビウスがうちに来て、人さらいの情報と、ハバント孤児院のことを詳しく調べてほしいって、依頼を申し込んできたんだ」
ハバント孤児院。
その名前を聞いたとたん、オレの心臓が大きく跳ねた。
だって、それは間違いなく、オレが育ったところだったんだ......。
雷に打たれたみたいに動けないオレをよそに、グエンはそのまま話し続ける。
「それで調べたら、その孤児院。かなり運営が切迫していてね、破綻 寸前だったことがわかったんだ」
破綻寸前......。
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