8 / 16

第8話

『孤児院』ってなに? 『雇った』ってなに?  オレの頭に嫌な予感が過ぎる。 「なぁ、さっきの話。どういうこと?」  オレはベッドからむくりと起き上がると、男に尋ねた。 「い、いや......はは......ファビウスくんは、どこかな~?」  男は、そんなオレを無視してあさっての方を向いた。  相手はどうやらオレがいないと決め込むようだ。  だけど、そんなこと、できるはずがない。  だって、さっき、たしかにこの男の口から聞こえたんだ。 『孤児院』っていう言葉を――。  その言葉はファビウスだけに関係があるなんて思えない。 「おい、白々しいこと言ってんなよ!?」  オレは起き上がり、見知らぬ男をジロリと(にら)む。 「あ~、僕が言ったこと、ファビウスくんにはナイショね?」  男は、薄い唇に人差し指を乗せて、そう言った。  オレは、コクコクと何度もうなずくと、男はようやく観念したかのように唇をひらいた。 「僕はグエン。私立探偵をしているんだ。それで4日前、ファビウスがうちに来て、人さらいの情報と、ハバント孤児院のことを詳しく調べてほしいって、依頼を申し込んできたんだ」  ハバント孤児院。  その名前を聞いたとたん、オレの心臓が大きく跳ねた。  だって、それは間違いなく、オレが育ったところだったんだ......。  雷に打たれたみたいに動けないオレをよそに、グエンはそのまま話し続ける。 「それで調べたら、その孤児院。かなり運営が切迫していてね、破綻(はたん)寸前だったことがわかったんだ」  破綻寸前......。

ともだちにシェアしよう!