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第9話

「それって......」  まさか......。  オレがグエンにもう一度尋ねようとしたその時だった。  タイミングを見計らったかのように、また、この部屋のドアが開いた。  綺麗なプラチナブロンドがオレの視界に入ってきたから、やって来たのはファビウスだってすぐにわかった。 「グエン、来るなら来ると、事前に連絡をよこせ。なぜお前はいつも土壇場になってから連絡を......よこ……」  そこまで言ったファビウスは、オレの顔を見るなり、固まったまま動かない。 「ファビウス、どういうこと? 孤児院は人さらいを雇ってオレを誘拐したってほんとう?」 「グエン! お前が話したのか!?」  オレがファビウスに()いているっていうのに、ファビウスはグエンに尋ねる。 「いや......あはは」  そのグエンは口の端を引きつらせ、薄ら笑いを浮かべながら逃げるように出て行ってしまった。 「グエン!! アールには言うなと言っただろうが!!」  グエンに怒鳴るファビウスの声はとても大きくて、夕方でも近所迷惑になるんじゃないかっていうくらいだ。  ......だけど。  オレは、ファビウスの大声なんて気にならない。  それ以上に、心は打ちひしがれていたからだ。  グエンは、孤児院が人さらいを雇ったとそう言った。  そして、金にも困っているとも......。  人さらいの標的になったのはオレ。  それって、孤児院がオレをさらうように言ったってことだよな?  オレが……いらなかったって、そういうことなんだ。

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