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第10話

「オレ、孤児院からもいらない奴だったんだ......」  そりゃ、オレってちょっぴり乱暴者で気が短い。  それに無愛想だ。  だから里親になってくれる人はいない。  だけどまさか、孤児院でも受け入れてくれていなかったなんて、思いもしなかった......。  シスターたちや、オレよりもうんと低い年齢の子供たちともうまくやっていけてると思ったのは自分だけで、実はそうじゃなかったんだ......。  そう思うと苦しくて、悲しくて......。  だけど泣くのも(みじ)めすぎた。  だからオレは笑う。  だけどその声は、とても乾いたものだ。  胸が締めつけられてすごく痛い。  涙だってあふれてきた。  オレは誰からも必要とされていない自分が恥ずかしくなって、うわ掛け布団をぎゅっと握り、(うつむ)いた。  ――季節は真夏。  それなのに、体温が下がって、冷えていく......。  だけど、それも長くは続かなかった。  オレの体はまるでブランケットにでも包まれたみたいに、ふいにあたたかくなったんだ。  オレの背中に、力強い腕が回る。  いったい誰だろうって思ったけれど、グエンはさっき出て行ったところだ。  すぐに誰だかわかった。  それはオレにとって、ありえないって思える人物――ファビウスだった。 「アール、よく聞け。お前はいらない子なんかじゃない」  どこか焦りを見せるテノールが話す。  ヘンなの。  いつも冷静なのに、今のファビウスはそんなんじゃない。  ものすごく慌てているようだ。

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