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第13話 焦り
ピッ ピッ ピッ
(ん…?どこだろう)
意識は浮上したのに目が開かない。指先がピクッと跳ねると、温かい熱に包まれた。
(温かい…まだ、眠っていたいな…)
また深いところにいこうとする。
「リョウタ…起きたら…話をしよう。聞いてくれる?……ハッ…何を話すっていうんだ、バカか俺は」
(サキだ…。聞いてあげたい。なのに体が鉛みたい…)
無理矢理意識を浮上させる。聞こえる機械音が大きくなる。
「リョウタ?リョウタ!大丈夫か?カズキさん!カズキさん!」
サキの声と足音が遠くなった。それでも目を覚まさないと、と必死に争う。
「っぷは!はー!はー!はー!」
目を開けることに成功したが、目眩や吐き気が一気に襲い、身体も動かないままで焦る。
「リョウタ!分かるかい?…顔色が悪いな…吐きそう?」
コクコク頷くと紙袋が口に当てられた瞬間に胃液を吐いた。咳と呼吸、吐き気が同時に起こって苦しくて死ぬかと思った。
「まだ回復してないのに…どうして。薬が効かなかったのか…?あと3日は寝ていると思ったのに」
(やっぱりまだ起きちゃダメだったんだ…)
サキもいないし、カズキに迷惑をかけてしまった。先ほどのサキの言葉も、もしかしたら夢だったかもしれない。
(ダメなやつだな…役に立たない)
「きついよね、苦しいよね。リョウタ頑張れ。頑張れ」
カズキが優しい顔で、頭を撫でてくれる。気持ちよくて目を閉じると涙が頬を濡らした。
「大丈夫大丈夫。リョウタ今はゆっくり休む時。ね?」
ぽん、ぽん、と優しく腕を触ってくれる。
「カズキさん…」
「ふふ、大丈夫。おいでサキ」
カズキがサキを手招きして、ベッドの近くに立つ。
「リョウタ焦ってるから元気にしてあげて。初任務でリツに会うなんて相手が悪すぎた。」
「…俺が、動揺してたから、ミナトさんの指示も無視してリツさんに向かったんだ…俺のせいだ。」
(違うよ、違う)
言いたいのに、言葉が出なくて、目も開かなくてひたすら涙が頬を濡らす。
「ごめんな、ごめん。俺のせいでこんなことに。ごめん」
「こら、サキ!元気にしてって言ったの!泣かせないで」
「泣きたいよ俺だって。」
「…サキが素直なんて…。サキおいで」
きっとカズキが慰めただろうと安心してまた深い眠りに入った。
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