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第15話 情報屋

体力がだいぶ戻って、サトルに付き合ってもらって体力作りをした。超がつくほどストイックな鍛練をしているところへ、よくレンが見学に来ていた。情報収集の仕事がない時はのんびり過ごしているようだった。 「はぁ〜…カッコいいよなぁ。サトルが俺専属だなんて、もう響きがエロくね?あの筋肉たまんねぇよなぁ〜。あー…ヤりてぇ」  心の声が全部漏れていて、うっとりとサトルを眺めている。サトルに聞くと、仕事のスイッチが切れるとあの状態になり、今の姿が本来のレンらしい。  しばらくレンを放置して組み手や銃の撃ち方を学び、今日の鍛錬が終わる頃にはレンは気持ち良さそうに眠ってしまった。  「レンさん少年みたいですね」  「…そうだな。こいつはずっとこんな感じだ。でも自分で情報屋が天職だって言ってたな…。日本の大学もアメリカの大学も首席で受かってたのに、アサヒさんに会ったらすぐ組織に入りやがった。バイリンガルで頭もいい、容姿も…まぁ悪くない。なんでこんなところに、ってな。」  道具を片付けながら淡々と話すサトルに、お互いを認め合っているのが伝わって微笑む。 「…レンさんを追って?」  「…ほっとけないからな。道を踏み外したのは俺もだよ。医師の家系に生まれた俺は、全てを捨ててここに来た。」  (やっぱりお医者さんだったんだ!) 「レンさんのため?」  「それ以外に理由はない。そして、治療するのはレンだけだ。知識や技術はカズキには勝てないからな。お前たちの命を預かることはできない」  レンさんはいいのか、と聞こうとすると、苦笑いをした。  「…こいつが嫌がるんだよ。俺が他のやつに触るの」  「可愛い…」  「…なのに、仕事中は営みさえ聞いといて、なんて悪趣味だよな。」 慣れたけど、というサトルは少し拗ねているように見えてリョウタはクスクス笑った。  サトルは笑われたことが照れ臭そうに目を逸らしてレンを起こす。長いまつ毛がゆっくり持ち上がって、色素の薄い茶色い瞳がぼんやりと彷徨う。  「レン、行くぞ」  「サトル、おんぶぅ…」  「甘えるな。ほら立て。」  細い腕を持ち上げるとよろめくレンをサトルがしっかり支えた。 「お前…わざとだろ?」  「甘えたいのー。いいじゃねーか!オフなんだぞ!?明日はお嬢様とあんなことやこんなことするんだぞ!?今日くらい甘えさせろよぉ〜」  ん〜と汗の滲むサトルの胸に顔を擦り付け、深呼吸をしてサトルを見上げる。  「ねぇ、我慢できない」  リョウタはもろにそれを見て真っ赤になって、反応したのを隠して走って逃げた。レンの大爆笑が聞こえてさらに顔が熱かった。 「…お前な、何度も揶揄うなよ」  呆れたようにサトルはレンを見た。笑いを堪えきれず肩が震えている。 「いいじゃねーか!リアクション良すぎてツボ!!童貞最高!!ぎゃははは!」  「…」  「んで、お前が不機嫌になるのも、リョウタ絡みだけだろ?取られると思ってんの?不安なの?ん?どうなの?」  「別に」  「まぁ興味はあるけどねー?童貞可愛いもんなぁー。俺様の中で足腰立たなくしてやりて…ンッ!?んっ、んー!」  噛み付くようにキスしてきたサトルに驚くも、予想通りに煽られてくれて口角が上がる。レンは自分からも舌を絡ませて、サトルの内腿を撫でる。  「サトル、部屋、行こ?」  サトルの胸筋が、汗で滲むシャツから見えて、服ごしに噛み付く。サトルの肌や荒い呼吸も匂いも全部がレンを酔わせる。  (これに比べたら、仕事中は恐ろしいほど冷え切ってるわ…。サトルが触るだけでとびそう…っ)  大男2人が激しくベッドで絡み合うと、ギシギシと大きな音がなる。  ドンドン!!  隣のハルに注意の意味を込めて壁を叩かれるも、2人は止まることはできない。  「はっ!はぁ、ぅんぁっ!サトル、っ!」  ビクビク震えながらうつ伏せになり、腰を上げて誘う。ローションをたっぷりかけられて、来る衝撃を目を瞑ってシーツを握る。サトルの太く長い指がグッと中を抉る。  「ッぁああ!っあ、はぁ、んっぅ、はぁ!」  「期待したのか…っ?」  「んぅ!っは、ぁ、した、ぁ、」  ぐりぐりと前立腺を刺激され、カクカクと腕が震える。サトルが触っている、という事実だけでゾクゾクして頭が沸騰しそうになる。  「はぁっ!ん!…んっ、んぅ、さとる、っ、さとるっ」  早く欲しくて、指では足りなくて必死に名前を呼ぶと、顎をとられて振り返り濃厚なキスをする。全部が快感に支配されてふわふわして理性がプツンと切れた。  「ッァアア!!さと、っる!早くっ!はや、くっ!も、もぅ!イきそっ…!」  「何でお前は俺との時だけこんな早いんだ」  「サトルっ!さと、っ、ダメッ、ダメッ…ーーッァアア!!」  入れてもらう前に達してしまい、ビリビリと快感が身体中を通っていく。  (やっばい…もう、気持ち良すぎる…っ)  「いくぞ」  「へっ?!…あっ、待って、まって、今、イったばか…っぅあああーーッ!ァッ!ァッ!」  勢いよく熱が入ってきて目の前に星が飛ぶ。涙と涎が滴るのも気にしてられないほど、激しい快感。媚薬よりもコントロールできない。サトルがいる、それだけで簡単に身体を預けてしまう。安心感と幸福と快楽。やめられるはずはない。 「レン…」 「ぅあっ…」  耳元で名前を呼ばれ、ゾクゾクする。サトルの低い声が好きで、中をきゅんきゅん締め付けてしまう。  (サトルの顔が見たいな…)  枕を握って、震える腰を支えた。 「全く…」  ため息と共に抱き寄せられ、一度抜かれてひっくり返される。  「あ…」  「そろそろこっち向きがいいだろ?」  「〜〜っ!!?」 (何で…分かるんだよ…)  顔が熱くなって、恥ずかしさが込み上げる。ふわりと背中をベッドにつけると、サトルがゆっくり顔を近づける。  「レン…綺麗だ」  「っ!!?」  頬を指が撫でる。  愛おしそうに見つめてくる顔に息が止まりそうになった。  (美の暴力だ!!)  「どうした?ほら、顔を見せろ」  「いや…だ、見るなっ」  「見せてくれ…俺にしか見せない顔を」  「っ!!」  「うん…綺麗だ…」  (もう…恥ずかしくて死にそうっ)  優しいキスをもらって、胸の粒をいじられ、固くて太いそれが中のしこりを抉る。  「んあーーッ!!」  「はっ、はっ、レン、っ、レン」  「ッッァアア!あぁっ、あっ、んぅ、イっ」  「ダメだ。まだ付き合え」  「や…ぁ!イきたいっ!サトル、サトル」  直前で握り込まれて身体が暴れる。頭が真っ白になり、サトルに助けを求めた。  (怖い、怖い)  抗えない絶頂が猛スピードで上がってくる。自分じゃどうすることもできずに、サトルにしがみついた。  「っぁ、っあ!っああ!」  「ふっ、っ、っ、出すぞ」  「ぁっ、あぁっ!あああ!あっ…」  「くぅ…っ、ンッ!!」  「っンッ…っ、ッあああーーっ!!」  ふわりと浮いた気がして、意識が遠のいた。 ーーーー  「準備できたか?」  「ん。どう?」  髪を上げて、ピアスをつける。今日は男としての仕事だからメイクは無しだが、肌の調子がいい分、明るく見える。 スーツは自分に合うよう仕立ててもらっている。何着もあるうちの1番高いものに袖を通し、最後まで身だしなみを整える。サトルに向かってポージングをすると、問題ないと深妙な顔で言われる。  (また心配してくれてるんだよな…ありがとう。)  危険な仕事だと分かっている。バレたら死しかない。車の中でギリギリまで資料を読み込んで頭に入れる。  (よし。)  「ミナトさん、開始します。」  『うん。よろしく』  振り向かずに車を降りて、高級ホテルのカジノに向かう。前乗りしているリョウタの位置を確認して、前から少しずつアプローチをかけているターゲットを見つけて声をかけた。録音しながらお嬢様を口説く。 (どうですか?貴女の好みになってると思いますけど?)  2人だけの空間を作って、何でもない話をする。向こうはこの作ったキャラクター、稔を気に入ってくれている。そして、今夜、2人きりになりたいと言ってきた。お嬢様は、レンが笑うだけで顔を赤らめてくれる。小さな頭を撫でて、人のいない所でゆっくりキスをする。夢中になるお嬢様を可愛いと思い、腰を抱く。 (このキスをサトルが見てると思うとめっちゃ燃えるんだよなぁ)  お嬢様が用意したという部屋に行き、気持ちよくしてあげながら洗いざらい吐いてもらう算段だった。 (…やはり繋がっているのか…口を割らないな)  『レン、今日は引いていいよ、ありがとう』  耳元で聞こえた声に返事をして、さっさと抱いて出ようと動いた時だった。ミナトの声に集中しすぎて、少し気が抜けていた。 チクッ  手の甲に痛みが走った。 「っ!?」  「誰の指示なの…?ねぇ、稔さん?」  「何のこと?」  血管に直接入れられたものが何か分からず背中は冷や汗が滲む。動揺がばれないように、微笑みながら見たお嬢様の手には小さな注射針。 「稔さんは怪しいってパパは言ってた…」  「疑ってるの…?それなら手は出さない。ごめんね…。信じてもらえた時に君に触りたい。今日は帰るよ」  「待って!違うの!私は稔さんを信じてる!試してごめんなさい。私はそばにいてほしいと思ってる!稔さんのそばにいたいの…」  (パパ…?…怪しまれているということはもうここも安全ではない。盗聴器とカメラを探さないと…)  抱きついてキスしてくるお嬢様のしたいようにさせながら目だけで探す。すると、クローゼットに人の気配を感じた。 (っ!そこか!)  「待って…。いくらなんでもこれは酷い」  「え?」  強く引き離してお嬢様を睨む。 「君にはがっかりした。急におかしな注射をされたり、試されるだけじゃなくて、こうして大切な場所に部外者を入れるなんてあまりにも非常識だ。」  冷たく言うと、クローゼットやベッド下、別の部屋からスーツの男が3人出てきた。その腰には銃が備えられていた。 (やっぱりな…かまかけたらワラワラと…) 「貴方達っ!!!なんなの!?」  「お父様のご指示です。」  「ふざけないで!私に恥をかかせたいの!?出て行って!!貴方達はクビよ!絶対許さないから!!今すぐ出ていきなさい!!」  ヒステリックに叫ぶお嬢様にニヤリと笑う。これで解雇を恐れた奴らは全てデータを消しただろう。  「ごめんなさい稔さん…っ、私、知らなくて…っ…お願い嫌いにならないで」  「君の指示じゃないことは分かったからいいよ。泣かないで。」  「ごめんなさいっ、あなたに、この薬を打って様子を見ろって言われたのっ、パパの指示だったから…ごめんなさい、大丈夫?」  「大丈夫だよ。パパはきっと僕を脅すためだよ。ほら、何ともない。だから…パパを責めないでおくれ。パパにも認められるように頑張るから」  笑って髪を撫でると、安心したように抱きついてきて、胸に収まり、コクンと頷いた。  (よし、完全に落ちたな。ただ…今後は警戒しないと)  「稔さん、本当に大丈夫?うちのパパ、ここだけの話…いろんな薬を作って売買しているの。これは、新作って言ってた…。劇薬で冷静な判断ができなくなるから、その時にいろいろ聞いてって。たくさん実験もしてから心配で…。でも…こんなに時間がたっても何もないから大丈夫そうだよね…」  (きた!やっぱりこのお嬢様の父親が薬をばら撒いてる。製造まで管轄。)  『レン、よくやった。すぐ戻って、薬の効果が出る前に』  ミナトに返事をして、今日は帰りましょうと、お嬢様を説得して2人で部屋を出た。運転手に引き渡した後、突如吹き出す汗にドクドクと心臓が異常な早さで胸を打つ。 (まだ…まだ…車が見えなくなるまで…見送らないと。)  ひたすら立って見送り、見えなくなった瞬間に力が抜けた。  「ーっと。レン、お疲れ様。急いで戻るぞ。リョウタ、すぐ乗れ!」  「はい!」  サトルに抱えられて、車に乗せられる。だんだん呼吸ができなくなって、溺れたみたいになる。リョウタがネクタイを外して、シャツのボタンを開けてくれたが、どうも呼吸ができない。  「ーっ、ーっ!」  今までは媚薬や睡眠薬が多かったが、今回は体質にも合わないようだ。  「レンさん!!しっかりして!!レンさん!」  リョウタの叫ぶ声が遠くに聞こえた。 

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