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第33話 不安

「何かあったのか?」  部屋に戻ると、サキが不安そうに聞いてきた。大きな音を聞いて、ハラハラしていたようだ。今日あった出来事を話すと、目を見開いて驚いていた。  (嫌だ…ハルさんの選択が…怖い)  サキに抱きつくと、しっかりと腕が回った。ゆっくり深呼吸をすると、落ち着いてきてサキに甘えた。  「サキ…キスして」  見上げて言うと、すぐに降ってくる薄い唇。柔らかくて、少し冷たい。ずっと寝ていたのか寝衣のままのサキの服の中に手を入れる。 「んっ…リョウタ?」  「サキ…何も、考えたくない」  「…する?」  「うんっ…ん、」  サキの首に両手を組んで、より密着するようにキスをする。積極的なリョウタに驚いているサキに構わずキスをして、ベッドに押し倒す。  「リョウタっ、待っ…ン、んっ」  「サキッ、サキ…」  馬乗りになって夢中で舌を絡める。固くなった熱を服越しに擦り付けて、必死にサキを求めた。  (欲しい、あの衝動的な快感が。何も、考えたくない!)  「リョウタ」  「なに?」  「泣いてる…。大丈夫か?」  泣いていることに気がつかなかったリョウタは、頬を触ると濡れた感触に目を見開いた。  「全く…。ほら、おいで。」  「サキ…」  大人しくサキに体を預けると、細い腕が周る。  「ハルさんは、大丈夫だと思うよ」  「ん。」  「でも、ハルさんを求める人が多いだろうから…やっぱり心配だよな」  「ん。」  「ハルさんが敵の時、ミナトさんの指示がパッタリなくなって、俺たちは本当にギリギリだった…。アサヒさんが来なきゃ、もしかしたら全員やられてたかも。サトルさんも大怪我してたし、何より状況が分からなかった。」  サキは静かに話し始めた。  ーーーー (通信が途切れた…?)  目の前のリツの動きが覚束なくなり、サキも照準を合わせることが難しくなった。  (今撃てばリツさんまで撃ってしまう…くそ!)  状況把握の為に、現場に近づこうとすると敵に囲まれ、それどころじゃなくなった。なんとかリツが見えるところまで移動して、目の前の敵を見ながらリツを守ることを強いられた。 (どいつを撃てばいい?…ミナトさん!)  ザザッ  「みんな、撤収、して。…アサヒに、巻き込まれる」 (っ!!?アサヒさんが現場に!?)  怪我をしてるのか、苦しそうに呼吸しながらの指示だった。出血で、意識がないまま特攻するリツを回収するために、前線に行くと、1人の長身の男がアサヒにボコボコにされていた。血塗れになっても立ち上がり続け、その人の足元には、打ち合わせで確認した敵のボスの死体があった。  (アサヒさんが…)  他に外傷のないボスの死体。1発で仕留めたことが分かって悔しかった。 リツを回収して、レンが待つ車に乗り込んだ。車内には瀕死状態のサトルとリツが横たわった。  「ミナトさんが怪我してる。カズキさんも。アサヒさんの怒りは収まらないからすぐ行くぞ」  レンはカタカタ震える手でハンドルを握った。後部座席には、ヘッドホンを付けられたユウヒとアイリがそれぞれクマとウサギの布団に包まれ、気持ち良さそうに眠っている。  「間に合って良かった。良かった。」  レンはずっとそう言ってアジトに戻った。  カズキはミナトを治療した後、同時にリツとサトルの手術をした。容態が落ち着くと同時にカズキはぶっ倒れた。  サキが入って初めての劣勢だった。アサヒはあの時ボコボコにしていたハルを連れ帰り、躾部屋で長期間の躾を行なっていた。ほとんどその部屋に篭り、自殺しないようにと見張っていた。  (あの人が何かを握っているのか?)  誰も聞くことができず、リツはひたらすら気になるようで何度もミナトに質問したり、レンに探るよう依頼した。あの奇襲から3ヶ月後。ご機嫌なアサヒに紹介されたのは、今のハルだった。 ーーーー  「アイリとユウヒはハルさんの取り合いだったそうだ。子どもに好かれるタイプみたいだな。ミナトさんが不安定になってたから、ハルさんが子守担当になったんだ。」  サキは思い出してるのか穏やかな表情だ。  「俺たちには、ハルさんが必要だな」  「うん!」  「信じよう。ハルさんの選択。」  「うん!」  サキが笑ってくれたから、リョウタは安心して身体を預けた。  激しくして、と何度言っても、優しく、丁寧に抱いてくれた。たまらなくて、涙が勝手に流れて、細い指がそれを撫でて笑う。   (急に…大人になってる…)  中の熱が、ある所を攻めると、もうリョウタの意思ではどうすることもできなかった。迫り来る絶頂に、細い腕を掴んで、ガクガクと腰が動く。喉を晒せば勢いよく噛みつかれる。長めのサキの髪が顔にかかるのさえゾクゾクして、頭が沸騰しそうだった。  「サキッ!さきっ!…あっ!なん、か、」  「ん、ふっ、触る?」  「触って、も、出したいっ」  サキの手を、自分の熱に持っていって、一緒に握る。  (ァアァア!ダメだ!すぐっ…)  ギュッ  「ーーーーッ!!?」  「まだ…付き合って」  「や、やぁーーッ、やっ!イキ、たい!っ!サキッ!サキぃ!」  「もう、ちょっと、だから」  「もう、もうっ、へん!お願い!っ、や、離して!!」  「一緒に、リョウタ、ごめん、もう少し」  「っ、っう、ッイ、っ、あ、」  (ダメだ!イく!!!)  「ッぅァアァアーーッ!!」  「く…ぅ、…っ、…っ、」  ドサッとベッドに背中をつけて、何も考えられない。今までにない快感に処理が追いつかない。  (今の…何…??)  違和感に、下を見るとタラタラと雫をこぼす、まだ固さを持った熱 (あれっ?今、イったよな??)  疑問符ばかりになった中、イったばかりのサキがこちらを見た。  「っ!?」  (エッロ!!やだ、なんつー顔してんの!)  気怠そうで、汗だくの顔が色気たっぷりでこちらを見る。グッと息を呑むと、サキは何も言わないまま、リョウタの熱をパクんと咥えた。  「はっ?…っちょっと、待って、」  「んぅ、む、っ、んぅ、っ、はっ、」  「やだっ!さ、き、っ!はなして!やめて」  「っん、っふ、ぢゅる、っ、ぢゅるっ」  (恥ずかしい、恥ずかしいっ!!)  足がガクガクするのを、無理矢理広げられ、腰を押し付けるように揺れるのを止められない。  (は、はっ、もう、出ちゃうっ!)  「サキッ!はなしてよっ!…ーーッぁ、ァアァ!っ、だめ、っ、ッーーンッ!!」  ドクドクとサキの口の中に注ぐ。 (気持ち、よかったぁ…)  放心状態のリョウタに笑って、後処理をしてくれるサキ。サキが触れるだけでビクビクと身体が跳ねて、緩く勃ち上がった熱をサキに笑われた。  「リョウタって抱き甲斐があるよな。」  「どういう意味?」  「んー?なんか、もっと気持ちよくしてあげたいって思う。」  「??そう?俺もだよ?」  「そうなんだ。」  またクスクス笑うサキはなんだかご機嫌だからそのままにしておいた。 「全然違うよ…。こんな安心できるのリョウタだからだ。…抱いても抱いても不安しかないセックスが、どんなに辛いか…。」 思い出して気分が落ちそうになるサキ。  リョウタの寝顔を見て、クスリと笑う。  (リョウタのそばって、何でこんなに落ち着くんだろ)  リョウタを抱き寄せると、ンンッと声を出した後、サキの服を握って気持ち良さそうに寝息を立てる。  (年上のくせに…可愛いんだよな…)  サキは眠くなるまでリョウタの寝顔を見続けた。

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