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第44話 それも自分自身

(あれ…??)  サキが床で眠っている。いつもは隣に入ってくるのに気を遣ったのかもしれない、とリョウタはサキを起こす。  「サキ、サキ」  「っ!」  パシン  (え??)  手が思いっきり弾かれてリョウタはポカンと固まった。  「何。」  「ご、ごめん起こして…。」  「だから、何。」  「えっと、床、痛くない?隣空いてるし…」  「いい。」  (あれ??)  リョウタはいつもと違い、冷たい態度のサキに困惑した。どうしていいかも分からずに黙る。  (『サキ引いてたぞ』)  (まさか!それ!?)  アサヒの言葉を思い出してサキを見ると、寝返りを打って反対側を向いてしまった。  (えぇ〜…どうしたらいいの。)  リョウタは精一杯言い訳を考えたが分からず、直球勝負に出た。  「何で冷たいの!」  「はぁ!?」  ギロリと睨んできたサキに、うっ…と怖気ずくも、気合いを入れた。  「怒ってんの?」  「怒ってない」  「怒ってんじゃん」  「怒ってない!」  はぁ…とため息を吐いた。うーん、と考えていると、間があいたところでサキが小さく呟いた。 「誰だよ…あれ」  「誰って?」  「二重人格か…?お前じゃないもう1人。殺戮を楽しむ、みたいなさ…恐ろしいよ。」  「あれ…は…」  「俺の声も聞こえなくなって、アサヒさんの声も、ミナトさんの声も聞こえなかっただろ?何かが取り憑いたんじゃねーの。お祓いしてこい。」  サキは穢れを見るような目で見てきた。  ズキン… (否定…されるよね…)  「何が、取り憑いたか教えてあげる。」  「っ!心当たりがあるのか?」  サキはやっぱり!と心配そうにこちらを見た。 「過去の…いや、今までの…押し込んでた俺だよ。」  「……え?」  「あれは、紛れもない俺自身。言い訳も否定もしない。俺、嘘つけないからさ。」  リョウタはこれで嫌われるなら仕方ない、と腹を括った。  「俺はね…今まで…はっきり言って嫌われてた。邪魔者扱いだったし、都合の良い時だけ使われては捨てられてた。…それでも、その時役に立てたのならって笑って生きてきたよ」  サキは目を見開いて驚いていた。  「みんなに好かれたいから…頑張ったけど、みんなの好きな人になれなかった。そしたらね、あの屋敷で…思い出したんだ。…許せなくなっちゃった。弘樹さんやハルさんのことと、自分がリンクして…止まらなかった。」  ごくりとサキの喉が動くのを見て、自嘲した。  「全員…俺が殺したかった。過去の分も乗っけて、人を傷つけて笑う人たちを抹殺したかった。あの時の俺は…それを楽しんでたよ、間違いなく。」 (サキは…綺麗な目で俺を見てくれていたのに…。やっぱり、サキの理想にもなれなかった。俺の本質は…誰にも愛されない。)  寂しくは無かった。仲間であることには変わらないから。アサヒの言葉がリョウタに勇気をくれた。  「サキ、怖いだろ?俺が。いいよ、それが素直な感想だと思うし。幻滅したのなら…仕方ないし。」  「何…を」  「サキには、純粋な子が似合うよ」  俺じゃない、と首を振るとサキの目が大きく見開いた。  「違う!そんなこと言わせたかったんじゃない!!」  「んもー。大丈夫だってー。サキを好きだって言う人はきっとたくさんいるよー。だって、イケメンだし優しいし…あぁ、朝弱いのと、髪の毛ボサボサは直した方が…」  「リョウタ!」  両肩を掴まれて、痛みで顔を顰めた。  「リョウタ…ごめん。ごめん。こんなこと、言わせるつもりじゃ無かったんだ。」  ふわりと抱きしめられて、サキの匂いに体の力が抜ける 「俺の…知らないリョウタを、認められなかった。全て知った気がしていたから。隠されてたのかなって…」  「俺も知らなかったもん。怖いよねー…」  「怖かった。声も聞こえないまま暴れるリョウタが。アサヒさんに殺されたらどうしようって、何度も何度も呼んだのに、反応さえしなかった」  サキが心配してくれてたことも、話してやっと分かった。お互い、初めてのことで整理がついていなかった。  「敵も味方も区別がついてない気がして、撃とうかとも迷った。でも、あまりにも動きが早すぎて、狙いも出来なかった。」  カタカタと、背中に回る手が震えている。  「また…好きな人に銃を向けないといけないのかと、たくさん…迷ったんだ…」  弱々しいサキの声に笑って、リョウタはサキの白い頬にチュッと唇をつけた。  「リョウタ…」  「サキ。今度俺が暴走したら…撃ち抜いてよ。」  「嫌だ!俺はもう…」  「敵に殺されるより、サキに最後を決めて欲しい」  「何…言ってんだ…」  「約束ね!…まぁ、まだまだサキとやりたいことあるから、暴走しないようにコントロールを学ぶ!サキに狙われないようにしなきゃ!」  ニカッと笑うと強く抱きしめられて、骨が軋む。痛いと叫ぶと慌てて離れてくれた。  「リョウタ…俺はリョウタが好きなんだ。だから、他の人、なんて言わないでくれ」  「分かった。ごめん。」  「リョウタの抱えてるもの、話して欲しい。分からないから…俺は表面上しか…読み取れないから。」  「うん。見せていくよ、少しずつ」  サキはやっと笑ってくれた。キスしたくて目を閉じると、優しいキスが降ってきた。だんだん深くなって、たまらなくなる。ゆっくり押し倒されるとやっぱり痛みがある。  「チッ…アサヒさん…手加減してって言ったのに」  「手加減してたみたいだよ」 「嘘だろ。これは一般人で言うと半殺しだ」  サキは怒ったまま、そっとリョウタのジャージと下着を脱がした。  「痛かったら言って。力は入れないで」  「ん、分かった」  固く反り返った熱に、サキの真っ赤な舌が触れるだけで、気持ちよくて強ばり、痛みが走る。  「リョウタ、我慢すんな。そのまま感じて良いから」  「でも、声が…っ」  「いいから…んっむっ」  「あぁっ!っはぁっ…っあ、はぁあ!」  どうしても腰が跳ねたりすることで、痛みが襲う。気持ちいいと痛みが同時に来てもどかしい。  「リョウタ…今日はやっぱり…」  (ウソでしょ?こんな中途半端な!)  泣きそうになって首を横に振ると、サキは頭をかいて、部屋を出て行ってしまった。下半身丸出しで放置されたリョウタはポカンと口を開けたまま固まることしかできなかった。  ガチャ  「サキ…どこ行ってたの」  「カズキさんのとこ。痛み止め。即効性のやつ。短い時間だけらしいけど。」  注射され、深呼吸をする。しばらくキスしていると、サキの手が熱に触れただけで、ガクンと腰が跳ねた。  (あ…痛くない)  「効いたみたいだな。時間ないから…」  サキは焦ったようにリョウタにローションをかけると、いきなり2本入れてきて驚いた。  「ぅあっ!サキ…っ、あ、っ、苦し…よ」  「ごめん、焦った…」  それでも抜かずに、ヌチャヌチャと音を立てて慣らしていく。じわじわと上がって行く感度に、リョウタは顔を真っ赤にする。  (はっ…ぁ、気持ちいい。トびそう…っ)  少し乱暴な愛撫が、サキの余裕の無さを伝えて、求められているのが嬉しい。コツコツと前立腺を刺激されて、目の前に星が飛ぶ。  「やっぁ、っあああ!!っあああ!」  「すっごい締め付け…」  「ぁああ!っぁああ!」  首を激しく振って、強い快感から逃げようとする。  「おっかしいな…。カズキさん、感度も下がるって言ってたのに」  サキはクスクス笑いながら、自分の熱を取り出すと、ローション塗れにしたそれをゆっくりとリョウタに入れた。  「ッァアァアーーッダメ…ダメ…ッ」  ゆっくりと中を刺激されて、頭が真っ白になったと認識した頃には、思いっきり射精していた。少し震えるリョウタを、サキは嬉しそうに笑って待っていてくれた。  「あ…っ、っ、はぁ…っ、ぁ…」  「リョウタ…気持ちよかった?」  「すご…っい、ビックリ…したぁ…。」  「可愛い…」  前髪を掻き上げられて、おでこにキスをされた。サキの顔が近くてドキドキする。  「もう一回、後ろでイって。」  「へ…?ッァア!待っ…ッィアアア!ぁあ!」  「リョウタの声…頭おかしくなりそう…ッ、ふっ…は、は、は…」  「やだ…っ、んぅーッん!んぅ!」  「我慢しないで、っ、は、っ、」  「ん、んぅ…」  「こーら。声、出して、聞きたい」  (もう…っ、我慢できない…また、おっきいの…くる!!)  腰を掴むサキの細い腕を掴んで、ギュッと強く握りしめる。ゾクゾクが止まらなくて何も考えられない。目の前もボヤけて抑えていた声が勝手に喉を通った。  「ぁあーッ!ッ、サキ…ッ、さ…っぁ」  「はっ、はっ、はっ、リョウタッ、イって」  「ーーッ!!…ァアァアーーッ!!」  「…ッはぁ…は、はぁ」  ドクドクと注がれる熱に、ビクビクと反応する。気持ち良すぎて体が動かない。上にいるサキを見上げると、気持ち良さそうに眉を寄せ、目を閉じている。  (まつ毛長い…。本当、綺麗だよな…) 頬に触ると、ゆっくりと目が開く。優しく笑う顔にドキドキして、中をぎゅっと締め付けてしまう。  「ッ…リョウタ、しめないで」  「ン、ごめん…だって、ドキドキして…」  「やめて。今言わないで。反応するから」  「サキ、大好きだよ。どんな俺でも、好きでいてほしい」  「…うん。もっと、リョウタのこと、教えて。」  キスをして、名前を呼び合う。気持ちよくて、そのまま眠ってしまいそうだ。  (あれ!!?)  「さ、サキ…そろそろ抜いて」  「いやだ」  「ウソ…お願い、待って、今日はもう…」  質量を増す、中の圧迫感に、いやいやと首を振るが、サキは楽しそうに笑って、再び腰を引いて、中を堪能した。 

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