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第47話 いぬ
(どうしよう。弘樹さんが起きたのに…嬉しいはずなのに…なんか、)
リョウタは、うわぁー!と心の中で叫んで枕を抱きしめた。
(なんか、嫌だ)
眉を下げて、ため息を吐いた。
味わったことのない感情の処理の仕方が分からない。
プリンはいつの間にかハルに冷やされていた。とぼとぼ部屋に戻ってきたリョウタは布団にくるまって全てを遮断した。
(俺のサキなのにっ!)
大人気ない事を思っている自分が恥ずかしい。
「リョウタ」
「ひいっ!!」
突然のサキの声にビックリして変な声が出た。恐る恐る布団から顔を出すと、サキと、弘樹。
(うわ!一緒にいるし!)
「弘樹も今日からここで寝るから」
「え!?」
「宜しくお願いしまーす!弘樹です!」
爽やかな、人懐っこい笑顔を向けられる。
金髪が似合っていて、犬みたいだ。
「ヨ…ヨロシク…」
「あれ?…ん〜?組長からリョウタさんと合いそうって言われたけど…俺、こんな感じですか?」
「こ、こんな感じって?」
リョウタは少し緊張して聞くと、弘樹は少し考えた後、口を開いた。
「犬みたい」
きょとんとした顔で言われて、腹が立った。
「お前もだろーが!!」
「わぁ!?ごめんなさい!」
布団に巻き込んで閉じ込めると、中で慌てている。
「こら。いじめるな」
「いじめてない!」
サキに頭を叩かれ、反論すると布団からプハッと弘樹が出てきた。
「あっはははは!リョウタさん楽しい〜」
天使のような笑顔で言われて、リョウタはもの凄く自分が悪人に思えた。
「可愛いっ!ムカつくけど可愛い!」
きゃはは!と笑う弘樹を強く抱きしめる。嬉しそうにしている弘樹が元気になって良かったと心から思った。
「似てるな、お前たち」
「「え?どこが?」」
2人でハモって、弘樹がまたきゃっきゃっと笑う。毒気を抜かれて、リョウタは弘樹の頭を撫でた。
「お前たちは、上段で寝ろ。」
「はーい」
「えっ!?俺も?」
「…何か不満?」
慌てるリョウタに、サキは耳打ちした。
「俺が盛って困るのはリョウタだろ」
ボンッと音がしそうなほど顔が熱くなる。弘樹が、なになにー?教えてー?と騒ぐのを押さえながら必死に照れる顔を隠した。
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