49 / 191

第49話 戯れを見る影

「リョウちゃん!打ち合いしよ!」  「あー!ヒロずるい!次は俺とリョウタの番だろ!」  訓練のメンバーが増えて、サトルが学校の先生みたいだとレンから揶揄われていた。  リョウタは苦笑いしながら、ユウヒと弘樹がやるようにと言って休憩を取った。  (あっつ…)  汗を拭いて座り込むと、隣にレンが座った。  「お疲れーっ!どう、ヒロは?」  「いやぁー。やっぱハルさんが稽古つけてただけあるよー!俺より動きがいい」  「さすが!弘樹の母親は有名な殺し屋だよ。」  「え!!?」  「義美との結婚が決まる前にできた子さ。弘樹の親父は義美との結婚を嫌がったが、お家の面子のための結婚を余儀なくされたのさ。可哀想だよな、全員。」  レンは弘樹を見ながら眉を下げた。  「弘樹がもしあの組の頭になってたら…アサヒさんと同等になれる程のポテンシャルはある。…それを恐れたのさ。弱い奴らは力が恐怖みたいだな。」  弘樹はユウヒを簡単に倒して、威嚇しては口を大きく開けて笑っている。  (楽しそうだな)  リョウタもつられて笑うと、レンもユウヒにヤジをとばした。  「リツが抜けた分、3人の力が備わったわけだ!怖いもんはねーよ。」  レンの言葉に、リョウタはレンを見た。  「リョウタ、俺たちは…最終的に桜井テンカを討つ。その為に力をつけたり、任務をして周りを固めてる。」  「…はい」  「桜井テンカはアイリを狙ってるそうだ。絶対渡してはダメだ。」  「アイリを…」  「そう。アサヒさんがいれば、まず安心だが…。頼りっぱなしはアサヒさんの負担になる。1秒でも早く強くなってほしい」  「はい!」  大きな返事をして、弘樹と対峙する。  (のんびりしてる場合じゃない。親父と言ってくれたアサヒさんのために。)  「かかってこい弘樹!」  「臨むところだ!!」  嬉しそうに笑って向かってくる弘樹。  弘樹は飲み込みが早い。リョウタとユウヒの良いところをすぐに取り入れる。  「っ!」  (早いっ!!)  レンは口を開けてリョウタと弘樹の訓練をみていた。 「へー。リョウタが押しされてるー」  「あぁ。やっぱ才能が違うよ。リョウタのスピードと、ユウヒの柔軟性、それにハルさん仕込みのあの力の入れ方。」  バキッ!!  サトルがレンに解説している間にリョウタはぶっ飛んだ。  (これだ!俺に足りないやつ!)  リョウタは口から溢れた血を拭って笑った。 心配して駆け寄ってきた弘樹の手を掴んだ。  「弘樹!もう一回!」  ーーーー  低めのビルの屋上。全身黒で身を包む人影。 「うーー…ん。ここには、ミナトはいないのかぁ〜残念。子どもたちが遊んでるだけ」  長い髪を結び直して、足をぶらぶらさせた。  「やっぱ昼は嫌い…頭痛いや」  シンヤは頭を押さえて、下を向いた時、子どもたちを見守る2人の大人を見た。  「わぁ!綺麗な人、みっけ!!」  シンヤはニヤリと笑った。 

ともだちにシェアしよう!