64 / 191
第64話 力と人望
テンカの足を貫通した銃弾を見て、アサヒは慎一郎に電話をかけた。
「おい。このじじい、回収して。そして2度と目の前に現れんな。今度は殺す。」
『何故今は逃す?』
「ここに迷惑はかけられない。一般人を巻き込むな馬鹿野郎ども」
電話を切って、アサヒは負傷したテンカを冷めた目で見ていた。
「目的は?」
「お前がいつまでも自由にしてるからな。そろそろ戻れ。気が済んだだろ。シンヤからお前に優秀な部下がいると聞いてな。使えると思ったのだよ。予想通りお前が来た。」
「クソ野郎が。人様を巻き込むなよ。」
「部下やその周りを殺されたくなければ大人しく戻ってこい。お前が継がないからいつまでも働き詰めだ。」
「ボケ防止になるだろ。…何度も言うが戻る気はない。」
「シンヤが死んでもいいのか?」
ニヤリと笑うテンカに、アサヒもニヤリと笑う。
「どうぞ?何も影響ないんだけど、ウケる」
「唯一の兄弟に慈悲も無くなったか」
「無いよ。爆弾みたいな奴だ。何考えてるか分かんねーし。」
アサヒはデスクの上に座る。窓の外を見て、サキによくやったと合図をした。
「親父はさ、仲間に恵まれないよな。使えない忠誠心だけのじじい、バカ、爆弾…数と規模ばかりでかいけど、中身は空っぽ。そんな奴らの頭になるのなんかごめんだね。ゴミばっか。断捨離しろ断捨離。」
首をパキパキと鳴らし、慎一郎の気配がした。
「やはり、ミナトしかないか…」
「あ?何て言った?マジ殺すぞ。」
ギンッと睨みつけると、ニヤニヤと笑う。
「昔からミナトにだけ…何をそんなに固執しているのだ。戻ってきたら側近にでもしてそばにおけばいいだろう。安全だ。いつまでも駄々捏ねてないで…」
「なぁ、ボケてんの?何回同じ話すんだよ。…さっさと連れて帰れ!」
慎一郎に言い放つと、アサヒはミナトに終わった、と報告をいれた。慎一郎がテンカを背負って去ったのを見て、脇腹を抑えた。
「痛ぇ…なぁ…相変わらず馬鹿力め…っ」
アサヒはガクンと崩れ、意識を飛ばした。
『アサヒ?…アサヒ!!アサヒ、しっかりして!』
インカムにミナトの叫びが止まらなかった。
ともだちにシェアしよう!