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第67話 目覚め
(お腹すいた…)
リョウタが目覚めると、カズキの膝でアイリが寝ていて、サトルが椅子に座ったまま寝ていた。
「…わぁ…アサヒさん…」
隣のアサヒに驚いて声が出た。
やはり色男。寝顔もずっと見ていられる。
「ん…リョウタ…」
サトルが起きて、おでこに大きな手がおかれた。
「ん。下がったな、良かった。」
「あー!よく寝たぁ!お腹すいちゃった!」
「ふふっ」
サトルが笑ったのを初めて見てきょとんとした。ふわりと抱きしめられて厚い胸板にドキッと肩が跳ねた。
「良かった…。リョウタ、ありがとう。」
「へ?へ!?」
「頑張ってくれて、ありがとう」
目を合わせて、頭を撫でられると、ボンッと音がしそうなほど顔が熱くなった。
(優しい顔っ…かっこいい…っ)
「あ、あの、っ、あの、」
「何焦ってんだ、体温計るぞ」
いつもの感じに戻って体温計を渡される。ドキドキしたまま受け取って脇に挟む。すると、ドアの隙間から物凄い殺気を感じた。
「ひいっ!れ、レンさん!」
「レン、おかえり」
「リョウタお前、サトルにときめいてないよな!?あれは、心配していた可愛い後輩が起きて良かった〜っていう喜びからのそれだから!!勘違いすんなよ?」
レンの顔がドアップで凄んできて、激しく頷いた。サトルが病み上がりを虐めるなと言ってくれたけど、医務室でいちゃつき始めて目のやり場に困る。
(お腹すいたぁーーっ!)
キッチンに行きたいのに、まだ貧血なのか、動くことが出来ない。枕を抱いて拗ねていると、コンコンとドアがノックされた。
ガチャ…
「うわ…いっぱいいる。」
「サキ!サキ!」
「リョウタ!良かった!起きたのか!」
チラリと覗いた顔にリョウタはテンションが上がってサキを必死に呼んだ。サキに触りたくて手を伸ばすと、その手を取って抱きしめられた。
「リョウタ、良かった。本当に良かった」
「サキ、お腹すいたぁ」
「すぐハルさんに作ってもらう!」
サキが待ってろ、と言って走って出て行った。
「愛だね〜」
「もう!イチャつくのやめてくださいよ!」
リョウタが大声を出すと、カズキとアイリ、そしてアサヒまでが目を覚ました。
「リョウちゃん…おはよぉ」
「アイリ!ありがとう!カズキさんも!」
「良かった、完全復活だね!」
カズキは眼鏡をかけて笑った。
アイリがアサヒの元に行き、すりすりと顔を擦り付けた。
「お父さん、おはよう」
「アイリ、おはよう…ありがとうな」
「今日は学校お休みしていい?」
「いいよ。」
そう言うと、アイリの大きな目がみるみる潤む。アサヒは苦笑いしてアイリを抱き寄せた。
「うぅ…っぅ、ぅわぁああああん!」
「ごめんなー。心配かけたよなぁ」
泣き止まないアイリに、みんなが微笑んだ。
「アイリ、もう泣くな」
「お父さんっ、お父さんっ」
しがみつくようにアサヒにくっついて離れないアイリを撫でて、アサヒはアイリをベッドに入れて抱きしめ、トントンと背中を叩くとだんだん落ち着いてきたアイリはすやすやと寝息をたてた。
「アサヒさんも、まだ万全じゃないので寝てください。」
「は?大丈夫だよ。リョウタも起きてるのに俺が…」
「ダメです。ドクターストップ。」
カズキがバシッと言うと、アサヒはクスクス笑って、目を閉じた。
ドカン!!
「リョウタ!!ハルさんのおにぎり!」
「「「サキ!静かにっ!!」」」
「え…」
全力で持ってきたサキだったが、3人に怒られ、落ち込んでしまった。
「くっくく…っ」
アサヒは寝たふりをしているが、肩が激しく揺れている。
「…いらない?」
寂しそうにおにぎりを見たサキ。
アサヒがガバッと布団をあげ、涙が出るほど笑っていた。
「やば…っ、あっはははは!腹いてぇ!可哀想だろ!お前ら!サキに意地悪すんなよ…あっはははは!」
アサヒの大爆笑に、リョウタがつられ、カズキもサトルも笑い始めた。拗ねたサキは勢いよくドアを閉めて出て行ってしまって、アサヒは悶えていた。
「可愛いっ!なんなの!あいつ!最高!」
「リョウタに似てきた?犬みたいだったな」
「んーっ!サキ可愛いーっ!」
リョウタも枕を抱きしめてサキに悶えた。
しかし、しばらくサキの機嫌は治らず、リョウタはご機嫌を取り続けた。
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