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第73話 謝罪

「リョウタ、食えそうか?」  「うん!お腹すいたーっ!」  空腹で目を覚ましたリョウタは、自分で歩けるくらい回復した。ハルの後をついていくと、好物ばかりが並んでいた。  「うわぁああ…ハルさんっ…今日何の日?」  「これは、俺からの謝罪」  「謝罪?」  ハルは頭を下げて謝ってきた。リョウタは立ち上がって両手を振った。  「なんでっ?ハルさん!やめてよ!」  「弘樹がケガさせた。すまない」  「そんな!俺が弱いからだよ!訓練だから…」  「あいつは、訓練だと思ってない。お前を打ちのめしたかっただけだ。」  リョウタはいろいろ思い出して頭を掻いた。  「あー…やっぱり勘に触るよね…。ハルさんごめん。俺が悪いんだよ」 「…何かしたのか?」  「うーんと、ユウヒと付き合ったって聞いてびっくりして…。その…キスしたこと言っちゃったんだ」  「キス?誰と誰が?」 ハルはキョトンとこちらを見てくる。リョウタは目を逸らして、小さな声で言った。  「俺…と、ユウヒ」  「は!?」  「いやっ、その、弘樹が来る前だから…。えっと、ユウヒは俺を、弘樹はサキが好きだって思ったてたんだけど…」  仲良くなったんだね!と苦笑いして言うと、ハルは頭を抱えて大きなため息を吐いた。  「まぁ…年頃が揃うとこうなるのか…?」  ハルは苦笑いして、リョウタの頭を撫でた。  「とんでもねぇな。ガキ共の恋愛は命懸けか。」  「はは…。ご迷惑をおかけしました。」  リョウタは謝ったあと、涎を垂らして料理を見ると、ハルが爆笑してスプーンをくれた。  「はぁっ!お腹いっぱい!幸せいっぱい!」  「それは良かった」  「弘樹大丈夫かな?落ち込んでないかな?」  「さぁな」  ハルが洗い物をして素っ気なく答えると、静かにやってきたカズキがハルのお尻を叩いた。  「痛!」  「さぁな、じゃないでしょー!?肋骨!4本 !や・り・す・ぎ!!」  「えぇ!?ハルさんが!」  ハルは知らんぷりして洗い物を続ける。  「大丈夫だよ。リョウタも、アサヒさんも。あそこまでやらなくても許してた。弘樹に謝りなよ。」  「嫌だ」  「嫌だじゃない!」  「俺は悪くない。悪いのはアイツだ。」  低い声で言うハルに呆れて、カズキは苦笑いした後、背伸びしてハルの耳元に近づいた。  「ハル」  ガチャン!!  (わ〜。ハルさん顔真っ赤!!)  リョウタはスプーンを咥えながらニヤニヤとそれを見ていた。  「ごめんなさい、しなさい。分かったね?」  その後カズキは、ハルの耳を舐めて、ピアスを噛むと、ハルがヘロヘロとしゃがみ込んだ。  「分かった?」  「…っ、わかりました。」  力が抜けたハルにカズキとリョウタは笑っていたが、しばらくハルはそのままだった。  「リョウタ、サキ、起きてる?」  「あ!まだ見てません!見てきます」  リョウタは心配かけたであろう恋人のもとへ走った。  ーー  「ハル〜」  「うるっさい!リョウタの前で!」  「だって聞かないから。」  リョウタが去ったのを確認してカズキはハルの隣に行った。顔を真っ赤にしたままのハルが涙目で睨んでくる。  (可愛いよね、僕のハル)  勃ち上がった熱を鎮めようと頑張るところも可愛い。どっか行けと乱暴に言う時は、まぁヤバい時。  (昨日から気が立ってたもんね?ハル、どうする?)  ニコニコしてカズキはハルを待つ。意図を汲んだハルが悔しそうに歯を食いしばる。  「買い物、すんぞ」  「あっは!部屋じゃなくていいの?」  「弘樹が寝てる」  「はいはい」  何があってもアジトではシないのがハルらしくて笑う。エプロンを外して、カズキは軽い荷物だけ持ってハルの手を引いた。  カランコロン… 「あれ?ハル兄どっか行った?」  「わぁ!お皿割れてる!」  ちょうど降りてきていた桜井一家。アイリがシンクを見て驚いている。  アサヒとミナトは目を合わせた後、2人でクスクス笑った。 

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