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第74話 仲直り

ガチャ  「サーキー」  リョウタは部屋に戻り、クマがひどい寝顔を見つめた。髪を撫でていると、ゆっくり長いまつ毛が上がった。  「ん…りょうた…おはよう」  「おはよ」  「こっち、きて、となり」  「ふふっ!いいよ」  ぼんやりした目と、舌足らずなお願いが可愛くて笑いが込み上げる。ベッドに上がると、強く抱きしめられて、寝息が聞こえた。  (あらま。俺、このまま?)  苦笑いして、サキの心臓の音が心地よくて、リョウタは欠伸をした後、目を閉じた。  コンコン… ガチャ パタン 「ん…?」  (誰か入ってきた??)  リョウタは目を擦ってドアを見ると、床には白い紙が畳まれて置かれていた。 (何だろ?)  サキが寝返りをしたタイミングでベッドから抜け出し、その紙を開く。  『リョウちゃんへ  ケガは大丈夫?  ごめんなさい。リョウちゃんがうらやましくて、八つ当たりしちゃいました。  嫌じゃなかったら、一緒にカフェに行こう。 弘樹』  「行く!!弘樹!行くー!!」  勢いよくドアを開けて、リビングに行くと、桜井家が驚いてこちらを見ていた。  「なーんだ。元気そうじゃねぇか。」  アサヒはクスクス笑って、安心したよ、と頭を撫でてくれた。ユウヒはぶっきらぼうにごめん、と謝ったがアサヒに怒られ、しっかり起立したあとに頭を下げてきた。  「いいからいいから!それより弘樹は?」  「見てないよ」  「あれ?」  キョロキョロすると、壁から影が見えた。  (出てこれなかったのかな?)  「弘樹みーっけ!」  「うわぁあああ!?」  尻もちまでついて驚いた弘樹に笑うと、弘樹の大きな目がうるうるとしてきた。  「ごめんねリョウちゃぁああああん!!」  「あっははは!弘樹〜大丈夫だよ?」  涙と鼻水を擦り付けながら謝る弘樹が可愛くて、頭を撫でた。  アイリもとことこやってきて、弘樹を慰めた。  「アイリもごめんよぉおおおお!」  「んも〜ヒロくんてばぁ!」  アイリはニコニコして、弘樹の金髪をサラサラと撫でた。 ーーーー  「落ち着いた?」  「うん!今日は俺の奢りっ!」  2人は街中を歩く。  この間の銀行の向かいのカフェに入ると、リョウタはショーケースの中のシナモンロールに釘付けになった。弘樹は苦笑いして、他のお客さんのために、5個までと制限をつけた。  リョウタが食べている姿をニコニコしながら見て、弘樹はリョウタに不安を打ち明けた。リョウタは、モグモグしながらそれを聞き、食べ終わったところで弘樹に向き合った。  「恥ずかしいけど、始めはね、弘樹に嫉妬してたんだよ?…でも、今は、弘樹のことが大事なんだ。怒らせてごめんね」  リョウタは素直に謝ると、弘樹の目が潤んだ。  ドンッ!!  「「え?」」  目の前の交差点で、突然車が爆発した。  逃げ惑う人々。そして、黒ずくめの男達が銃を構えている。  「リョウちゃん!」  「うん!行こう!」  リョウタはミナトに連絡した後、2人で状況を確認した。  「リョウちゃん、テロかな?…6人だね」  「ド派手にやってんね。目的はなんだろう?」  撃つ様子もなく、ただ空間が空いていく。  (どうしよう、ミナトさんの指示がないから…どう動けばいいか分からない)  完全にオフだった2人はインカムを持っていない。電話をすると、片手が塞がる。  「リョウちゃん。こっちは丸腰だ。指示なしでは厳しい」  「確かに。一旦戻って…」  弘樹を見たその後ろに、黒ずくめの男が笑う。息を吸った時、後ろから何かを嗅がされて、暗闇に落ちた。 

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