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第75話 快楽という暴力

(ん…ここは…?)  目を覚ますと真っ暗で、キョロキョロしても何も見えない。目を擦ろうと動かすと、ガキンッと何かに阻まれた。  「痛っ…」  金属で繋がれているようだ。  (弘樹!弘樹は無事なのか!?)  ガチャガチャと拘束を鳴らし、空間を確認する。 カツン…カツン… 革靴の音がして、ギリっと歯を食いしばる。  「やぁ。1人は起きたか。あとはお前だ」  「ぐぅっ…あ、あ、」  すぐ隣で弘樹の呻き声が聞こえた。2人とも繋がれているようだ。  「お前ら桜井アサヒの部下だな?あそこで何していた?俺たちを狙っていたのか?」  「ちがう!事故だと思って見ていたらお前たちが来たんだろ」  「…やっぱりアイツ…“稔”は情報屋だったか」  「ゴホッゴホッ…みのる?」  弘樹はきょとんとした声を出した。  (もしかしてレンさんのこと…?)  リョウタは弘樹と同じく知らないふりをした。  「あの男が嗾けたのさ。テロを起こせば知名度が上がる。たとえ桜井アサヒのシマでも安全にな!」  「…そうかもしれないけど、いま、俺らに手を出せば、お前達はボスに目をつけられる。」  弘樹が冷静に言うと、敵は確かに、と笑う。  (何が…おかしい?)  「俺は、試したくなったのだよ。桜井アサヒが本当に強いのかを。桜井アサヒがこんな無名なチームに消されでもしてみろ。テロよりも効果はある。」  「無名で無知とはね。呆れる。」  「こら!弘樹!」  リョウタは慌てて止める。  人質になった場合は、刺激しないほうが得策だ。  「あ?なんだこのクソガキ」  「俺はね、木讃岐組にいたんだよ。知ってる?お兄さん。」  「さぁ?知らないな」  「知らない?……あぁそう。じゃあ今すぐ手を引いたほうがいい。俺たち木讃岐組はね、桜井アサヒに一夜で暴力団の組を壊滅させられた。」  「それはお前らの組が」  「俺らの組が、なに?」  ゾクッとするほどの低い声音に、リョウタは息を飲んだ。弘樹の冷静な声は、強い殺気を感じた。  「ねぇ…?無知は悪いことじゃない。でも、決めつけたり、頭の悪い人の価値観で想像したら」  「っ!」  「お前ら、全員死ぬよ」  「うるせぇええー!!」  弘樹に向かって殴りかかるのを、弘樹は足で抑えた。  「あは…だっさ。こんなクソガキに止められてるよ?俺、目隠しもしてるのに…ふふ。大丈夫かな?俺らのボスに勝てるかな?」  「黙れ!」  「弘樹!もう煽るな!」  バリッ  突然リョウタの目隠しにされていたテープが取られた。  (え!!?)  見えた景色に絶句する。周りには男たちが笑っている。その目線が気持ち悪くて息を呑む。  弘樹に向かっていた男を、宥めて笑うスマートな男性。  (レンさんの、変装していた姿に似てる)  「み、稔さん!こいつら…」  「落ち着いて。せっかくいいお客さんが来たんだ。僕らの名前をあげるチャンスでしょ」  「リョウちゃん、誰なの?」  まだ見えないままの弘樹はもどかしそうだ。  「弘樹…。本当に…知らない人」  「あぁ。君たちの情報屋。やってくれたね?僕の名前を使ってまぁ…。このチームと利害関係が一致してね。楽しませてくれよ」  稔は優しく笑って、まず弘樹の首に注射針を向けた。リョウタは目を見開いて叫ぶ。 「弘樹!」  「っ!」  間に合わずに、何かを入れられる。近づいてくる稔に、リョウタは首を振って嫌がった。ガチャガチャと拘束具が鳴る。  「嫌だ!嫌だ!」  あの日を思い出して、ガタガタと震える。  「おや…。これは、以前何かある?脅かせてごめん。大丈夫かい?」 稔は優しく抱きしめてくれた。あの日レンが使っていた香水と同じで、レンと錯覚し落ち着いてきた。  「…なるほど。あの情報屋は完璧のようだ」  稔のスーツを握ってしがみついていると、ごめんね、と言われ、注射針を刺された。  「さぁ!みんなショータイムだよ!桜井アサヒの部下による後尾をご覧ください!」  手錠が外され、弘樹の目隠しも外された。  少し離れたところで男たちが見ている。  繋がりを解けたなら、すぐに脱出したいところ。 「はー、はー、はー」  「ふぅ…っ、ふぅ…」  (また…これかよ。最悪。全然力入らない)  「リョウちゃ…ん、ヘンだよ、っ、熱い」 弘樹は初めてのようで、顔を真っ赤にして倒れ込む。床に擦れただけでもビクッと跳ね、苦しそうに眉を寄せた。  (あ…弘樹…エッチな顔してる。可愛い)  ぼんやりと弘樹を見て、じりじりと近づく。目が合うと、助けてと涙をこぼしながら近づいてきた。  その手を、押さえつけて押し倒した。  「やっ、やっ、リョウちゃん、リョウ、ちゃん」  歓声があがるのが雑音に聞こえる。リョウタも初めての衝動にどうしたらいいか分からない。固まっていると、下から甘く名前を呼ばれる。真っ赤な唇にゆっくり重ねる。サキとは違う、ふっくらした感触。 (あ、やばい。止まらない)  弘樹も必死に舌を絡めてくる。首に回った手の力が強くて、弘樹の上に倒れ込むと、2人の痛いほど固くなった熱が触れた。  「「アァッ!」」  同時に声を上げ、動けなくなる。服の中で出したそれが気持ち悪い。ビクビクと力が入らないまま、2人は必死に呼吸をする。  弘樹がもじもじと足を擦り合わせる。リョウタは動けないほどの快感に耐えていると、稔が2人を離した。  稔によってリョウタから脱がされていく。いちいち刺激を拾って、クタリと稔に頭を預けると、君は気に入った、と激しいキスと共に押し倒された。  「リョウちゃんっ!」  「そっちの金髪の生意気なクソガキは俺が相手してやる」  「こら、乱暴するなよ」  「よがらせてひれ伏すように躾しますよ」  「触るなぁ!気持ち悪いっ!」  「気持ちいいの間違いだろ、クソガキ」 弘樹が脱がされると、背中に沢山の入れ墨。触るなと暴れるのも虚しく、男の愛撫に悔しそうに喘いだ。  「ほら、リョウちゃん。僕に預けて。…あ、君?男いるでしょ?ここが、すぐ解れる」  「アァッ!っぁあああー!サキ!サキ!」  「サキ君というのか。妬いちゃうなぁ。こんな可愛い君を抱けるなんて羨ましい」  後ろからハグされたまま、穴にサキよりも長い指が入る。目の前がチカチカして、少しの刺激で叫ぶ。  「君の身体、傷だらけなのに何故だろう?とても綺麗だね。」  「さき、さきっ!助けてっ、さき!」  「んー。他の男の名前は気分が悪いね」  グリグリっ  奥に長い指が3本入って、腰がガクガクと浮いた。  「ッァアアアーーッ!や!だめぇ!ダメ!…イっ…ッーーーー!!」  激しく背中を反って、口から涎が垂れる。何も考えられなくて、ひたすらに快感を求めて苦しい。呼吸もしにくく、ぼんやりしたまま受け入れるだけ。サキ、と呼ぶたび痛いほどの快感が襲い、食いしばった唇から血が流れた。  ふと目を開くと、ぼやけた視界の中で、弘樹が達する瞬間を見た。 いつもの弘樹とはまるで違う色気がある。眉を下げて脱力する弘樹に目が釘付けになった。 (弘樹に触りたい)  「あ…あ、ひろき…ひろき、」  「ん?向こう行きたい?」  コクンと頷くと、微笑んで連れて行ってくれた。降ろしてもらい、目の前にあるビクビクと余韻に浸る弘樹の熱をパクンと咥えた。上から初めて聞く可愛い絶叫と、髪を握り締められた痛みがあった。 (弘樹、弘樹)  リョウタが一生懸命愛撫すると、口の中の熱がビクビクと震えている。  (出して、弘樹。)  裏筋を刺激すると、泣きそうな顔でこちらを見た。  「りょ…ちゃん、っ、ごめ、ごめんね、っっ、ンぅッ!だめ、だ、がまん、っっ、でき、ないっっ、くぅ…っ!ごめんね、っっ!出ちゃうっ…ーーっぁあああー!!」  止まらない熱をコクコクと飲み込んで、弘樹を見ると、弘樹が快感に落ちたのか、リョウちゃん、と手を伸ばしてきた。  お互い相手の熱を握ってゆっくり扱くと気持ちがいい。キスをしながら必死に扱くと、奥が疼く。  「ひろき、中もして?」  「っ、ん、っ、分かんない、教えて、」  「ん、ひろき、の中で、おしえる」  弘樹の穴に指を差し込むと、ガクンと顎を反らし、パサリと髪が揺れた。  「いたい?」  「っ、や、っ、や、これ、」  「ここ、を、こうして」  「っぁあああ!?っああ!まって!」  弘樹が顔を真っ赤にして喘ぐ。  (可愛い、可愛い)  リョウタはドキドキして弘樹の中を探っていると、後ろから腰を上げられ、振り返ると稔が凶暴な熱を擦り付けてきた。  (はっ!?そんな大きいの、)  ぎちぎちぎち… 「ッ!?ァーーーーッ!!」  「ふぅー…きっついね、慣れてると思ったけどやはり僕のは苦しいかな」  「ーーッ!ッ!」 はくはくと息をしても、強烈な感覚に頭が真っ白になる。  「リョウ…ちゃん?」  「あぁ、ごめんね?今、リョウちゃんはトんでるから少し休ませてあげて。」  どこにも力が入らなくて、目を見開いても何も見えない。涙がパタパタ落ちるのを弘樹が指で拭ってくれる。  「助けて、サキさん、ユウヒ、組長ぉっ」  弘樹が涙を流した。その名前を聞いて、また稔が苛立った。  「誰だよ、サキって。2人して…。さすがにムカつくね」  まだ馴染んでいないリョウタの腰を掴んで引き抜き、叩きつけるように奥を抉られた。  「ーーッ!ーーッ!」  (怖い、怖い、怖い、怖い)  痛いほどの感覚。もう奥にはいけないのに、何度も何度も侵食されていく。  ズボッ  「ッ!?〜〜〜〜ッ!!」  声にならない声で叫んで、壊れた蛇口みたいに、突かれた分だけ、勢いよく欲を吐き出す。心臓が異常に速く動いて、目の前の弘樹が手を伸ばすも、その手を取ることができない。  (死ぬ!死んじゃう!!)  本当に何もできないまま何度も中に吐き出され、お腹もおかしい。 暴力よりも苦しい時間は、何度絶頂にいっても、吐き出すものがなくなっても続いた。  「リョウちゃん。君を気に入ったよ。ああ…可愛いね、お漏らししちゃって。おトイレ我慢できなかったかな?ふふ…この僕が、相手が意識を失っても止められないなんて。」  稔の言葉は、リョウタにも弘樹にも聞こえなかった。 

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