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第76話 総動員
「情報がない?生ぬるい事言うな!死ぬ気で探せ!!」
アサヒがレンを叱責し、電話を切った。ドカッと椅子に座り、イライラを隠せなかった。
(テロが起こったという連絡から消息不明。あの2人を狙った理由は?あのテロの意味は?…まず誰が俺のシマを)
間違っても、他の組がわざわざやるのはありえない。ただ、レンの言う「情報がない」はマークしていたところとは別だと言える。たまたまそこにいた2人が巻き込まれた可能性がある。
(インカムもないし、ケータイの位置情報もあの場所のまま。監視カメラ、車のナンバーも…。なんでこんなに情報がない!?)
「落ち着いてアサヒ。アサヒが動揺すると、周りが心配するでしょ。レンに任せて」
「おっそいんだよ!いつも早いくせに!あーもう!!俺が出る」
パンッ
熱くなった左頬と共に、体温が上昇する。
「…何すんだよ!!」
「ボスのくせに喚くなよ。恥ずかしくないの?」
ミナトの言葉に余計血が上る。一歩踏み出そうとした時に、後ろからユウヒがしがみついた。
「父さんダメ!!」
「っ!!」
「…父さん。お願いがあるんだ。」
「…ん?お願い?」
ユウヒの突然のお願いに驚いて、怒りが収まる。
「今回、俺を現場に出して」
「ダメだ」
「父さん!」
「ダメだ!!…2人が生きてるかどうかも、分からないんだぞ。」
静かに言うと、ユウヒはニコリと笑った。
「死ぬわけないじゃん!あの2人が!」
ユウヒの震える手と、冷や汗を見て、アサヒはそっと抱きしめた。
「ごめん。ユウヒ、心配かけた。」
「父さん?」
「ミナトも、ごめん。」
「いいよ。ユウヒ、ありがとう。」
冷静になったアサヒは、ユウヒも作戦会議に入れた。そしてまだ帰ってこないハルとカズキも現場に出す。
「総動員だ。俺の仲間に手ェ出した上にシマ荒らす無礼者には、きついお仕置きだ」
「父さんも出る?」
「あぁ。近くで見てみろ。父さんの仕事」
そう言うとユウヒは嬉しそうに笑った。
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