77 / 191

第77話 失敗

(まさかまさか。) レンは焦ったまま探し続けた。  (ウソだろ。本人がまだ生きてたか。)  聞き込みをしていると、最近変な奴らが活動を始めている事、そして、レンが変装していた稔がシマに入っていたことを知る。  (最悪。あのお嬢様との件で、消えたと思ったのに…しぶといな。)  情報操作のため、処理はしていたつもりだった。  (寝返ったか、金を積まれたか。そして、その処理の担当は死亡。)  レンが個別で雇っているメンバーも細かく探すとその事実が判明した。  (殺すよりも、口座を空にすべきだったな)  「アサヒさん、この間の銀行のビルです。稔という男が復讐のためかと。」  『お前しくじってたのか』  「はい!ごめんなさい!」  『…まぁいい。生きてたら給料減額で許してやる』  ブチンと切られた電話にホッとして力が抜けた。 「レン…」  「サトルー。俺がヘマしたぁ〜」  「だから処分は俺が、と言ったろ。個人で雇うな。管理できなくなるぞ」  「たしかに…。ウイとユイ以外は全員切ろうかな」  「そうしろ。たいした情報も持ってこない奴はレンの邪魔だ。」  サトルに甘えるレンの目付きは、冷たい目をしていた。  ひと通り甘えた後、サトルは任務に向かった。レンは部屋でミナトの指示を聞きながら、ぼんやりする。  (あぁ…俺のせいで可愛い2人が)  嫌だな、嫌だな。  俺のせいだ。  あの時、詰めが甘かった。  シマ荒らしするようなバカな奴だとは思えない。苦し紛れの策なのだろう。  嫌だな、嫌だな。  (俺さえいなければ。俺のせいだ。)  ザクッ  手の甲に突き刺したナイフを見て、どんどん気持ちが萎える。  (もう…疲れたな…)  インカムを外して、滲んでいく色を見つめる。 あまりミスをしないレンは、1つのミスに耐えられなかった。 片手で全員解雇と連絡を入れて、刺さったままのナイフを見る。  (抜いた方が、もっと染まる?)  コンコン ガチャ  「レン、稔のことだけど…」  「っ!」 「な…に、してるの、レン…?」  ミナトの真っ青な顔に、しまった、と思った。この人が動揺してはいけない。動揺させてはいけない。アイリみたいに繊細で、誰よりも頭がキレるけど、とても脆いメンタル。  自分を頼ってくれてるのが分かる。きっと自分には心を開いてくれているのが分かる。だからこそ、この人に見られてはいけなかった。誰よりも今すぐに消えたいと思っている、この人に。 (あぁ、俺がインカムを外してたからか)  「レン!ねぇ!?何してるの!!」  (どうしよう、どうしよう)  パニックになるミナトを見つめることしかできない。だって抜いてしまったら余計に広がるのが分かってるから。  「サトル!すぐに戻って!!」  ミナトが泣き出してしまった。あぁ、アサヒさんに怒られる、なんてぼんやり考えていた。 ミナトは泣崩れて指示をしなくなった。ミナトが不安定の時には、代わりがいつもレンだったのに、今は代わることもできない。  (あぁ…俺は冷静でいなきゃいけないのに)  押し潰されそうな感情に、力が抜ける。目の前のこの人や、ここのボスなんかより背負っているものもないのに、耐えられない。  (俺は、なんてダメなやつなんだ)  自嘲しながら、インカムを取る。  「サトル、そのままリョウタ達を探して」  『おい!レン!ミナトはっ』  「アサヒさん…皆殺しでお願いします。尻拭い、すみません。ミナトさんも…すみません」  『…お前、後で躾部屋に来い。逃げんなよ。…サトル、ユウヒと動いてくれ。俺は1人でいい。サキ、そこで待機。』  アサヒが代わりに指示を飛ばしてくれた。  安心してインカムを置いて、ミナトに頭を下げた。  「ミナトさん…俺、」  「嫌だよ、レンッ!お願い、そんなこと、しないで」  「ごめんなさい」  「レン、ごめんね、ごめんね、」  レンのために泣き喚くこの人の方が消えそうだと思った。 

ともだちにシェアしよう!