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第78話 現場

「ヒロー!!リョウター!!」  「いないな、こっちに行こう」  ユウヒはサトルに着いていく。  初めての現場が、好きな人達の奪還。  どこかで無事だろうと信じている。 (だって、特攻2人だもん!大丈夫!)  「しっ!…人の気配がする。」  ユウヒは人の気配を感じられないけど、サトルに従ってゴクリと唾を飲んだ。ゆっくりとドアを開けると、いい香りが漂う。  「こっちか。アサヒさん、突入します。12階Bフロアです。」  『OK』  銃を構えて入っていくサトルに続くとユウヒは目を見開いた。  全裸で首輪と手錠をされて、ぐったりするリョウタが、大きなベッドで倒れていた。そして、その隣の檻のような箱に、鉄格子をガシャガシャと鳴らし、同じく全裸で首輪と手錠、そして猿轡をされた弘樹が暴れていた。  「殺されたくなければ手をあげろ。」  サトルの声で、ハッと意識を取り戻し、その隙に意識のある弘樹に駆け寄り、猿轡を外す。 「ユウヒ!ありがとう!鍵がそこに。」  弘樹は冷静だった。ユウヒは目のやり場に困りながらも指示に従い鍵を取る。銃声にビビりながら、必死で鍵を通していく。  「ユウヒ、リョウちゃんが衰弱してる。」  「大丈夫。カズキさんもいるから。」  「運べそう?…ごめん、僕、もう…っ」  拘束具を開放すると、ドシャっと倒れた。背中の入れ墨に驚いたが、それよりも顔色が悪い。  「ヒロ?なぁ!ヒロ!しっかりしろ!!」  サトルがこちらを気にしながら、敵を倒していく。  (父さん、俺だけじゃ運べないよ!)  この銃撃戦の間を、2人担いで逃げることはできない。とにかくリョウタの鍵を開けようと近づく。  「僕のリョウちゃんに触るな!!」  綺麗な顔の男性が、血相を変えてこちらに向かってきた。急に出てきたその男の言葉に、ユウヒはイラッとした。  「ユウヒ!」  「大丈夫!サトル兄ちゃん!」  ユウヒはその人を倒そうと構える。  (大丈夫、やれる。)  必死な顔で向かって来るその人と間合いを詰めてお腹を殴る。  (少しズレた!次は!)  後頭部を狙ったところで、この人はユウヒではなく、リョウタのもとへ駆け寄った。  「あぁ…怪我はないかい?…良かった。可愛い可愛い僕の恋人」  (は?)  ユウヒは大きな目をパチクリと瞬きした。  愛おしそうに、意識のないリョウタの左手を取ると、その薬指にはキラリと輝く指輪。  「君、やめてくれないか。僕とこの子は恋人なんだ。許さないよ、傷つけたら」  「…そうなんだ。じゃあ、この檻に入っていた子は?」  「この子はペットだよ。躾がまだでね。すぐ噛み付くから…」  ギリッ  「ふーっ、ふーっ!」  「君…?目が…」  紅く、と言った顔を殴る。リョウタから離して、蹴り上げた。  (殺してやる!殺してやる!!)  『サキ、頼む』  パン!!  着地で殴ろうとした拳は空を切った。ドサリと倒れたその人に唖然とする。  「よく冷静でいられたな。偉いぞサキ」 インカムではなく、後ろから聞こえた声に、ユウヒは振り向く。  「父さ…」  「大丈夫か?」  ぎゅっと抱きしめられて、ドキドキとうるさい心臓を落ち着かせる。  「ユウヒ。大丈夫大丈夫。…ん、よし。落ち着いたな」  ニコリと笑うアサヒに安心してしがみつくようにアサヒの服を握る。  「サトル、お前はもう戻れ。レンとミナト、何かあったみたいだ。」  「でも、2人は?」  「大丈夫。ハルとカズキ呼んでるから。」  アサヒはベッドからシーツを剥ぎ取り、2人にかけた。  「おーおー。酷い愛され方だな。リョウタ災難続きすぎじゃね?」  アサヒはリョウタの左手を取ると、薬指から指輪を抜いて投げた。  リョウタの身体は弘樹との訓練の傷跡のほかに、大量のキスマークと、首と手首の鬱血、そして、  「あれ?…リョウタ!おい!大丈夫か!」  衰弱しきっているリョウタはぐったりしていた。カズキが駆けつけると、リョウタを見てすぐに処置が始まった。  「中毒症状だ…。だいぶ前から意識がなかったはずだ。」  ハルは弘樹を強く抱きしめて、ごめん、ごめんと謝っていた。怪我をしていた時のためにと持っていた服を着せてハルが弘樹を、アサヒがリョウタを担いだ。  「あ、そうだ。ハル、ライターある?」  「え?今吸うんですか?ユウヒもいるのに…」  不審に思ったハルがライターを渡すと、クスクス笑ってアサヒはシーツに火をつけた。  「え!父さん、どうして?」  「火葬〜」  「…あんなやつら、火葬してあげなくてもいいじゃん!」  「も、あるけど。このビルを見て、2人が思い出さないように。黒焦げにしてやる。」  それを聞いてユウヒはうん!と頷いた。 「ユウヒ、サキ。あとはお前達の仕事だ。ケアを頼むぞ」  「うん!」  『はい』  ユウヒはぐったりした2人を見て、パチンと自分の頬を叩いた。 

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