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第86話 整理

ガタンッ ゴトッ  「おーい!サトルこっち持って」  「御意」  アサヒが仕事から帰ると、既にトラックが到着していた。  「よーし!片付けますか!」  アサヒはジャケットを脱いで、シャツの袖を捲った。  「お父さん!おかえりなさい!アイリも手伝う!」  「そう?じゃ、これお願い」  アサヒはアイリに紙袋を渡した。  「なあに?これ」  「駅前にオープンしたケーキ屋。アイリ食べたいって言ってただろ?」  「うわぁーーい!!お父さん大好きー!」  「あ!こら!転ぶなよ?」  ハルちゃんに言ってくると風のように去っていった愛娘に顔の筋肉が緩む。  今日はアサヒの部屋を片付けて、部屋を一つ開けようと準備していた。狭い部屋だが、1人には十分だろうとミナトと話し合った。  レンの反省を、「レンがいなくなる」と大騒ぎしたミナトが笑顔になる提案の一つ。  ーーーー 『4人で寝よう』  この提案に、ミナトは恥ずかしそうに笑って、アイリとユウヒも良いって言ってくれるかな、ともじもじしていた。 1人が耐えられないミナトだったが、ほっとけば寝ずに仕事をしてしまう。脳がフル活動している間、心は疲弊していくことをやっと理解したようだ。 アイリは大喜びして、学校にも行くようになった。そして、ユウヒは順番を勝手に決めてはアイリと喧嘩していた。  「父さんのお部屋を片付けるの?」  「そう。部屋があったらまたケンカした時篭りそうだし…。弘樹の部屋にするのさ」  「え!?」  ユウヒが大袈裟に驚いて、アサヒはユウヒにウインクすると、ぶわぁっと顔が紅くなった。  (ま、意味は分かるだろ)  ハルから、カズキが弘樹に嫉妬して困ると相談を受けた。顔を真っ赤にしながらも、深刻そうなハルに爆笑しながら弘樹の部屋を分けることにしたのだ。  (あの狭い部屋に3人は申し訳なかったな。)  もともと弘樹を入れる予定がなかった分、部屋数は足りなかったがこれで丸く治まる。  ーーーー  「アサヒさん!物多すぎ!」  「だなー。なかなか捨てる時間がなくてさ」  「全く!こんなの使わないでしょ!」  元気になったレンは、ズバズバとモノを言ってきて苦笑いする。サトルがいなきゃこいつは黙らない。  「うわぁ…アサヒさん、これって…限定モデルのやつ…」  「こら!サキ!手を動かせ!」  「アサヒさん!あの…、これ…」  「おう!貰っていいぞ」  サキがわぁっと笑顔になる。アサヒとレンはその顔に固まって目を合わせた。  「はぁ!!?お前こんな可愛げあったの!?反則!」  「う、うるさいな…」  「ははっ!本当は可愛いやつなのよ」  「揶揄わないでよ!」  サキは顔を真っ赤にして拗ねるかと思ったらまた新しい銃を見つけては目を輝かせた。  (本当に好きね〜銃)  要領良くやりたいレンと、マイペースなサキは相性が悪くてアサヒはクスクス笑いながら片付けた。  1番上の棚に、見覚えのあるアルバムを見つけた。一瞬手が止まる。  アサヒが悔しいときや、折れそうな時に開く物だった。  「「アサヒさん?」」  聡い2人はアサヒの変化にすぐ気づく。タイプが違うくせに、と思う。  「アルバムですか?」  「…あぁ。」  「前、シンヤが持ってきた写真の頃?」  「あれは汚いからすぐ捨てたけどな。まぁ、あの後…かな。高校時代の時。」  ここ最近はよく開いているから、あまり埃もかぶっていない。  「アサヒさんのこと、知りたい」  サキの言葉に思わず振り返った。  レンも頷いている。  「…お前らだけの秘密だぞ」  そう言ってアサヒはアルバムを開いた。 

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