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第92話 デート前

今日、リョウタとデートをする。  デートをしたいと言った日から、ソワソワしているリョウタが可愛くて仕方ない。  たぶん、リョウタも初めてのデートなのだ。  ーーーー 「サキ、その、制服は準備できないんだけどいいかな」  「いいよ。さすがにコスプレになるし。」  「そっか。良かった。ごめんな?準備難しくて」  ーーーー 困ったように笑っていたリョウタを思い出してムラムラした。なんとかサキの希望を叶えようと頑張ってくれている。  (俺も気合いを入れよう!)  よし、とクローゼットを開けると、任務服にしている黒い服しかなかった。  (う…いつも通りになるな…)  サキは少し迷って、隣の部屋をノックした。  「はーい。サキどした?」  「服、貸して」  「はぁ?何で?」  レンが頭を掻きながら訪ねてくる。素直に言おうと思ったのに、顔が熱くなって下を向いた。  「何で赤くなっちゃうのー?まぁ、入りな」  大人しく部屋に入り、レンはクローゼットやスーツケースから沢山の服を出した。  「んーっと。お前背が高いからとりあえずなんでも似合うと思うけど、リョウタと合わせなきゃいけないから、シンプルめがいいかな」  「な、何でリョウタと出かけるって分かったの?」  「分かるわ!そんな顔を赤くして!で?どこ行くんだ?その場所でも浮かないようにしたほうがいいぞ。」  「どこかな…?」  服を選ぶレンの手が止まった。  「はぁ!?お前がプラン考えてねーのかよ」  「う…え?、俺がやった方が良かった?」  「あったり前だろ!さすがにデートなら、あのサトルもエスコートしてくれるわ!」  そうだったのか、とサキは少し動揺した。完全に受け身だった。  「おっまえ本当にさぁ。良かったなぁ相手が年上で!」  この甘ったれ!と頭を叩かれたあと、くしゃりと髪を掴まれた。  「なんっだよ!このボサボサヘアーは!」  首根っこを掴まれ、お風呂に連行された。  ーーー  「なんか、髪の毛が目に刺さる。」  「刺さるわけねーだろ。ほら、サラサラ〜」  「…なんか、邪魔」  「いつも絡まりまくってたからな。リョウタが前に濡れたサキの髪にドキドキするって言ってたけど、分かるわぁ」  髪の毛をとかされる手が気持ちいい。目を閉じるとウトウトしてくる。  ワックスで整え、長い前髪を少しあげる。  (よく見える)  急に視界が開けて瞬きをしていると、正面に回ったレンがニコリと笑う。  「いいね!男前!」  褒められて恐る恐る鏡を見ると別人がいた。 「へ、変じゃない?」  「どこが?カッコ良すぎてムカつくよ。」  頬にチュッとされて、そこを手で押さえて真っ赤になる。  「なっ…っ、なに、なに、を」  「ぶぁあっははははは!反応童貞かよ!こんな顔面もっといて!」  「きゅ、急にからかうからだろ!」  ムカついて出て行こうとすると、腕を引かれた。  「まだダーメ。いいか?リョウタをビックリさせるぞ。俺の美的センスに火をつけたな?」  「ビテキセンス?」  ーーーー  『いいか、サキ。ここのラブホなら男同士でもOKだ。リョウタがプランに入れてるはずはないからな。帰りに寄って来い。ハルさんたちの御用達だ。』  サキはレンから貰ったお店のカードをポケットに忍ばせた。デートらしく待ち合わせしたい、とサキが希望を出して、そこに向かう。  (やっぱり似合わないかな…。年相応ってこんな感じ?)  普段黒ずくめで肌を出さないサキだが、目立つと怒られたため、レンの私服を借りた。白いTシャツの上からネイビーのシャツを羽織る。下だけは黒がいいとごねて、細身のパンツを履いている。  (あっつ…。サングラスかけよ。)  普段前髪が隠している日光を直に浴びてサングラスをかけると落ち着いた。じりじり腕が焼かれるのを感じて、木陰に立つ。  (リョウタ、まだかなっ?早く会いたいっ)  サキは自分のオーラを知らずに、無邪気にリョウタを待っていた。  いつの間にか人集りができていることも知らずに。  「ねぇ、あの人イケメンすぎない?」  「モデルさん?色白い〜」  「ちょっと、声かけてみようよ」  ざわつく街の声も、サキには姫を待つ素敵なBGMにしかならなかった。 

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