106 / 191

第106話 決意表明

「おはようリョウタ」  「えっ、あ、お、おはよう」  サキが最近変だ。  朝も早いし、積極的にリョウタに話しかけてくる。それも無視できない場面や言葉ばかり。 「リョウタ、これ美味しい」  「あ、うん。それは良かった」  満面の笑みにパッと顔を逸らす。ユウヒや弘樹がビックリしてサキを見ているが、本人はお構いなしだ。  「サキ兄…最近ご機嫌?」  「うわぁ…イケメンッ!」  「あぁ!?なんだよヒロ!浮気か?」  「はいはい。ユウヒもイケメンだよ〜」  そんな会話に背を向けて洗い物に集中する。 (あぁ〜ハルさんカズキさん早く戻ってきてよぉ)  今日は朝から2人は買い出しのために、リョウタが一人で回していた。  アイリとユウヒ、アサヒも見送って、訓練の弘樹も見送って朝の時間を終えた。  (きっつい…きっついよ…)  リョウタはソファーに横になって休憩していた。 ガチャ  「「あ」」  開いたリビングのドアを見るとサキが立っていた。  「リョウタ」 「あ、で、出かけるの?」  「いや。リョウタに会いにきた」  「へ?」  「隣、いい?」  「え、いや、あの」  有無を言わさず隣に座る。リョウタは飛び上がってソファーから降りた。  「どこ行くの」  「えーっと、洗濯物忘れてたから」  「一緒にやるから…」  「いいよ、忙しいでしょ」  別の部屋に行こうとすると手を引かれた。  「リョウタのそばにいたい。」  「…へ?」  「もう一度、リョウタがそばにいてくれるように頑張るから、見ていてほしい」  「…はは、何それ」  ドクン…ドクン… 「1週間後、アサヒさんと、アサヒさんの本家に行く」  「へっ!?」  「俺が頼んだ。そこにリツさんがいるらしい。…俺がケリつけるために行く。リョウタに、もう二度と辛い思いさせたくないから。」  意志の強い目。  そこから目が逸らせない。 「必ずリョウタのそばに戻る。」  それだけ言って、サキは部屋に戻ってしまった。情報が整理できなくて、ソファーにポスンと座る。  (やめてよっ…期待しちゃうじゃんか) 顔が熱くて両手で隠す。  (あぁもう…。未練あるのは俺の方)  真剣な顔だった。向き合うのが難しいはずの傷ついた過去。自分のために一歩踏み出してくれた。 カランコロン  「リョウタ、朝ありがとうな」  「あれ?どうしたの顔真っ赤だよ。熱は?」  「えっ!?あ、いや大丈夫!元気いっぱいです!」 勢いよく言うと、カズキとハルは顔を見合わせたあと吹き出した。つられてリョウタも笑って、久しぶりにリラックスができた。 

ともだちにシェアしよう!