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第123話 仇打ち
「寝ちゃったね」
アイリがサキの顔を覗き込んで、その後にリョウタに言う。涙を拭って頷いた。アサヒが肩をポンポンと叩いてくれた。
「よし、リョウタ。ボコボコにしてやろうぜ」
その言葉に、リョウタは意味を理解して頷いた。
「六角グループのスナイパー陣は潰した。次は駒を消す。」
「はい」
「サトルとユウヒも…」
「俺一人で十分です」
アサヒを見つめてそう言うと、おぉ怖、と戯けて笑う。
「丸腰で、全員潰してきます。」
リョウタは指輪を強く握った。
ミナトには無茶だと止められたが、アサヒが送り出してくれた。これは任務じゃないと察した。
「お前の気が済まないだろ。暴れてこい」
「はい!」
サトルに近くまで送ってもらい、ミナトが渋々インカムで指示をくれる。
「リョウタ、くれぐれも無理はダメ。そんなのサキは喜ばない。今回は、銃取引を邪魔するだけ。いいね?」
「どんな形になっても、取引はさせません」
「…アサヒのせいだからね」
アサヒの笑い声も聞こえる。
(見えた!六角グループのやつら)
ミナトの指示を待たずに飛び出して、取引用の荷物を掻っ攫う。
「何者だ!…子どもか?」
「違うよ?桜井アサヒの、特攻だぁああ!」
一気に囲まれて、ニヤリと笑う。
(久しぶりだ!)
回し蹴りが決まって、怯んだ敵を追い詰める。返り血が臭くて、心地よい。
(場に酔ったみたいだ)
1人、銃を抱えて逃げそうな人を発見した。追うと、銃弾が頬を掠めた。
(いい腕前だね、おじさん)
口角が上がる。
サキ以外に上手い人は要らない。
だって、それは誰かを泣かせるでしょう?
(あ、俺もおじさんと一緒か)
首を絞めて、宙に浮かす。
「おじさんにも悲しむ人がいる?」
「がはっ!っ!っ!」
「いるよねぇ?俺もね、いるよ?お前達に撃たれたけどなぁ!!」
ギリギリと力を入れて、そのまま手を離した。
「サキに手を出したら全員殺す。覚えとけ」
リョウタはどこかにいるはずの内通者に宣言した。
返り血塗れのまま、奪った銃を持ってサトルの車に向かう。
「12分…バケモンかお前は」
「…遅かった?」
「早すぎるんだよ。」
サトルは苦笑いして車を出した。
ーーーー
「ヒューッ!やるねぇリョウタ!」
「ご機嫌だねアサヒ。まぁ品物も奪えたし結果オーライ?…だけど怖いよリョウタ。普段とのギャップが」
ミナトは大きなため息を吐いたが、アサヒは自分の見る目を評価しては大きな声で笑っていた。
「大切な人が足枷って人っているけど、リョウタはかなり力になるよな!良かった!」
アサヒはウイスキーをぐびっと飲み、いい酒だと騒ぎ、ハルを呼んで遅くまで飲み続けた。
「あいつが食事係してたとか!爆笑だぜ!」
「アサヒさん、明日に響きますよ」
「ハル〜俺は嬉しいんだ!リョウタならリツを超える!楽しみだっ!」
ハルは嬉しそうなアサヒに笑って、もう一杯だけですよ、とグラスを合わせた。
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